システムエンジニアとして幅広い業種・業界のお客さまに貢献する
情報学専攻卒業生の原田大輔さんが、世界最大規模の総合印刷会社・凸版印刷を選んだのは、その知名度よりシステムエンジニアとして自分の可能性を広げられる仕事の幅広さが魅力でした。先端技術を含めて未知の仕事にチャレンジする自信を養ったのは、認知情報学研究室で学んだ人の行動と伝える技術。学生時代の学びが今の仕事にどう活きているか迫りました。
Q1.工学院大学で力を入れた学びは?
何かを見る・触るといった、人の認知機能を科学的アプローチにより解明する認知情報学です。私はそのなかで目の錯覚、つまり「錯視」をテーマに学部の卒論から大学院の修論まで研究を重ねました。とくに後半は認知情報学研究室の先生の勧めにより、外部の研究者と共同研究を行い、物体の点滅移動によって人がモノを認識するときの処理プロセスを実験、検証しました。基礎研究の領域ですが、一定の成果を得られたと思います。
Q2.その学びを選んだ理由を教えてください。
学部2年生のときに受けた統計学の授業がすごく面白かったのがきっかけです。データから規則性を見つけ、客観的な事実にする手法をとてもわかりやすく教わったので、担当教員の蒲池先生にも興味を持ち、3年生の頃には先生のセミナーなども進んで受講しました。先生が主宰する認知情報学研究室に入ったのもその影響ですが、私自身パソコンを使ったモノづくりをするうえで、システムを扱う「人」を知らないと何もできないと思うようになりました。大学に入った頃は、漠然とモノづくりを考えていただけでしたが、恩師と言える先生と出会って学びの方向性が明確になりました。
Q3. 現在の職業を選んだ理由は?
一番はさまざまな業界や分野のシステムづくりに関われるという点です。印刷会社は紙からデジタルへと事業の多角化を進めていますが、なかでも凸版印刷の事業領域は非常に多岐にわたり、幅広いお客さまと仕事ができることに魅力を感じました。私が取り組んできた基礎研究は、特定の仕事の技術に直結するものではありませんが、逆に「人」の認知を研究したことによる知見は、どの分野のモノづくりにも活かせる強みです。多彩な仕事を通して自分自身の可能性を広げられるという期待も大きかったです。
Q4.これまでどんな仕事を経験してきましたか?
入社後は一貫してシステム開発に従事しています。最初の3年間は業務効率化を図るアプリケーションの開発がメイン、次にスマートフォンのアプリ開発を経て、現在はマーケティングを中心とするシステム構築に携わっています。担当するお客さまの業種は実にさまざまで、金融から小売、飲食、自動車と、いろんな業界に詳しくなりました。この2年はインフラ系のお客さまを担当しています。
Q5.具体的な仕事内容とやりがいを教えてください。
システム開発は案件ごとにプロジェクトチームを組んで行います。案件の規模により、システム化のヒアリングから要件定義、設計・開発といった上流工程を主に担当することもあれば、プログラミングやテストに携わることもあります。ミッション別に言うと、例えば自社製品の販促につながるマーケティングを行いたい、という要望に対しては、ターゲット層を調査して行動特性などのデータを抽出・分析し、SNSやメール、コールセンターなど、効果的なマーケティングを行う基盤を構築します。最近ではお客さま企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためのシステムを開発したいという声も多く、新しい技術の習得も欠かせません。初めての業種・業界のお客さまを担当する際に求められる学びも含めて、日々新しい知識と技術が身につくことがやりがいの1つです。最近では、これまで培った知識や技術が別の案件に応用できることにも手応えを感じています。
Q6.仕事の中で、大学で学んだことが活かされていると思うことはありますか?
やはり研究をめぐる議論や資料作成、プレゼンなどを通して得た「伝える技術」です。とりわけ認知情報学の基礎研究は、一般にどう役立つのかが想像しにくいため、第三者に自分の研究をわかりやすく文章にして伝える力がかなり鍛えられました。論理展開の枠組みはもちろん、助詞ひとつでも使い方によって相手の受けとめ方(認知)が変わります。特にシステム開発では、お客さまに現状でできること、できないことを正しく理解してもらわなければなりません。そこで記録に残す意味もあってQ&A集を作成していますが、アンサーの部分は特に細心の注意を払って、誤解を与えない記述を心掛けています。また、新たなシステム開発はある意味、トライアンドエラーの繰り返し。実験の失敗、仕切り直しを重ねるなかで培った、諦めずに食らいついていくメンタルの強さも大いに役立っています。
Q7.他にも活かされていると思うことがあれば教えてください。
1つは教職課程を履修したことです。教師は人に教えるためにいろんなことを考えるので、そこを学べたらと思いました。実際、いまプロジェクトのリーダー的ポジションを務めるときに、若手メンバーの接し方などに役立っています。ほかにも学生時代は「どこまでやれるか?」をテーマに、学習のペースを把握した2年次から、文化祭実行委員会に所属したり運転免許を取得したりと、さまざまなことに挑戦しました。ただ、言うまでもなく学生の本分は学業です。あまりにも手を広げすぎたらきっぱり削るなど、「選択と集中」を意識しながら学生生活を楽しんでほしいというのが、私からのメッセージです。
Q8. 今後の夢や展望を教えてください。
デジタル技術はすさまじいスピードで進化しています。エンジニアとしてはその潮流に乗り遅れることなく、特に現時点では先ほどお話ししたお客さま企業のDX実現のために、必要な知識や技術をチームメンバーとともに磨き続けていくことが目標です。また入社7年目を迎えて中堅社員になり、後輩も増えてきたことから、私が教わった先輩のように着実に仕事を行い、チームを牽引できるよう成長します。
凸版印刷はさまざまなお客さまの事業を通して社会インフラを支え、エンドユーザーの暮らしを豊かにする会社です。将来的には私自身が、よりよいシステムやサービスを創出できる人材になりたいと張り切っています。
Q9.工学院大学を卒業してよかったと思うことは?
よかったというより、工学院大学に行かなければ今の私はありませんでした。認知情報学という分野を知り、共同研究までおこなって深く追究できたこと、恩師の先生と出会ったこと、エンジニアとして幅広い仕事ができる自信がつき、今の会社に就職したこと。すべてが糧になっています。恩師の蒲池先生とは今もお付き合いがあり、しばしば会いに行ったり定期的に一緒に食事したり。研究室や大学院は先生と学生の距離が近いので、コミュニケーションをとる機会がたくさんあります。遠慮なく先生に話しかけて親しく交流すれば、納得いく研究成果はもちろん、私のように生涯続く宝物の絆が得られます!
工学院大学は、135年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!
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