学生時代に経験したトライ&エラーを 最先端の情報通信の現場で活かす
いまでは誰もが気軽に視聴できるインターネット映像配信サービスですが、それを可能にするために高度な情報通信技術が活用されています。株式会社U-NEXTは、映像配信サービス大手「U-NEXT」を運営する一方で、独自の情報通信技術の開発に取り組み、光インターネットサービスの「U-NEXT光」や、MVNO(仮想移動体通信事業者)事業「y.u mobile」へのインフラ提供など、幅広い事業を展開しています。花井雅人さんは、それらの研究開発を担うR&D本部に所属し、インフラエンジニアとして活躍しています。
Q1. 株式会社U-NEXTでどのようなお仕事をされていますか?
インフラエンジニアは、社内外との通信網を構築するネットワークエンジニア、サーバーを選定・構築してデータセンターのサーバーラック(サーバーの収納棚)に収めるサーバーエンジニア、各種機器の監視などを行う保守・運用エンジニアの3つに分けられます。多くの会社ではそれぞれ専任のエンジニアがつきますが、U-NEXTでは私を含めて4人のチームでそれらの業務を行っています。
サーバーの監視業務では、監視ツールから1日に数百通程度のアラートのメールが来るため、重要なアラートを見逃さないように常に気を張っています。また近年U-NEXTは従来の映像配信に加え格闘技等のリアルタイム配信も開始しており、そのイベント開催のネットワーク構築にも携わっており、チャレンジ制度(=本業務外のことに取り組む社内制度)を利用して、LTE回線を束ねて高速・耐障害性を高めるBonding技術の研究開発を行い、安定したライブ配信サービスの提供に貢献しています。
Q2. 株式会社U-NEXTへの就職を決めた理由は?
大学院に進学後、学んできた通信工学の知識と技術を活かせる道を模索していたところ、研究発表の会場に併設されていた就活支援ブースで現在の会社の人事部のスタッフと出会い、「当社であれば学んだ知識をそのまま活かせ、深めることもできる」と言われ、U-NEXTを希望しました。
U-NEXTには工学院大学の卒業生はいませんでしたが、入社した場合に同僚になるエンジニア社員と選考過程で積極的に話し、現場の感触をつかめたので、ミスマッチなく今日まで仕事を続けています。
Q3. 仕事のやりがいや魅力は?
人々にとって通信インフラは“正常に動いていて当たり前”です。実現するには様々な苦労がありますが、トラブルなどの課題をクリアして、お客様に動画サービスが提供できる環境を整えることに大きなやりがいを感じています。
また、テラバイトの約1000倍にあたるペタバイト級の大容量ストレージを扱ったり、最新の分散処理技術を扱うなど、次々に新しい経験ができることもこの仕事の魅力です。業務のほとんどが学生の時には経験できなかったことで、日々成長を感じています。
Q4. 今までの仕事で大変だったことは?
100人ほどいる社内エンジニアの約半数が外国人です。そこでは「日本の悪しき風習」は通用せず、合理的な根拠をもとにした論理的な説明が求められます。そんな時に役立ったのが、「リーダーシップ特論」の講義で学んだロジカルシンキングです。講義では、新田次郎著:八甲田山死の彷徨を読み「登場する2人のリーダーが取った行動でそれぞれのチームの運命が大きく左右される」という内容から、それぞれのリーダーがとった行動について、なぜそのような判断を下したのか・それは正しかったのかをリーダーの観点から論理的に分析するものです。講義では自分の分析を他の学生や教授の前で発表しあうので、他人を納得・理解させるためのロジカルシンキングの大切さを意識するきっかけになる面白い講義でした。
そこで学んだことを生かして、職場においてプロジェクトを進める時や、新しい技術や機器の導入を提案するときには、必ず周囲に論理的な説明ができるようにしています。
Q5. 現在の仕事で必要と感じているスキルや能力は?
この業界に限りませんが、社会は激しく変化しています。それに対応するには自分の仕事が好きであること、変化を恐れず楽しめることが最も重要だと思います。目の前にある仕事に興味があれば、その分野の知識や技術は自然と身につくものです。私も含め、社内のエンジニアは休日や仕事後に自宅でも何かしらコードを書いていたり、PCを自作したりなど、仕事に関連する趣味を持っています。「趣味が仕事で、仕事が趣味」ではありませんが、クリエイティブな仕事においてはスキルや能力ではなく「楽しめるか」が重要だと思います。
Q6. 仕事の中で、大学で学んだことが活かされていると思うことはありますか?
研究室で身につけた研究方法や考え方は大いに役立っています。大学では通信の公平性の向上の研究をしました。例を挙げて簡単に説明すると、自宅のWi-FiにiPhoneとAndroid端末が接続されている状態で、それぞれがYoutubeに同じ動画をUploadすると、なんとAndroidが早くUploadが完了します。道が空いているからとAndroidが車線を占拠してしまうので、これをWi-Fiルーターで制御するという研究です。
研究を通して実感したのが、実機での実践の重要性です。当たり前ですが、研究は理論的に正しくても実機で実現できなければ無意味です。しかし仮説通りの結果にはなかならならないもので、研究では実験結果のデータから原因を探り、また仮説を立てて再度検証して精度を高めていきました。
仕事も研究と同様にトライ&エラーの中から課題の解決方法を見つけていくものなので、大学で積み重ねた経験は、困難を乗り越える大きな力になっています。
Q7. 在学時、印象に残っていることはありますか?
学内の委員会・部活動・サークルの統括や学内外のイベントを行う学生自治会での活動がとても楽しかったです。高校までは「先生」という答えを与えてくれる人がいましたが、ここでは企画立案からイベントの実施まで、プロジェクトを通して学生だけで成し遂げました。先生という「答え」なしに学生同士の議論を通して1つのことを成し遂げたというのは非常に大きな経験となりました。学内外への発信力強化のために委員会の枠を超えたメンバーとポータルサイト「SHAiR」を立ち上げたのも、良い思い出です。
また、学部4年生から修士2年までの間はキャンパス見学に来た高校生の対応をする「学生サポートスタッフ」としても活動しました。この活動の中で、職員の方と、熱い議論を交わしながら、高校生への対応について考えたこともありました。相手が目上であっても、自分が考えていることをしっかり伝えることは社会人の今でも大切にしています。
大学院を卒業して5年が経ちますが、今振り返ってみても仲間に恵まれた学生生活だったと思います。
Q8. 後輩たちへアドバイスをお願いします!
私にとって工学院大学の魅力は、教職員との距離が近いことです。学部時代の指導教員の山口実靖先生は気さくで親しみやすく、気軽に質問することができ、知りたかったこと以上のアドバイスまでしてくれました。
また、“学生がやりたいと言ったら止めてはいけない”と学生の自主性に口を挟むことをせず、どんなに遅い時間であっても議論や相談に付き合ってくれました。ぜひ皆さんも工学院大学で熱心な先生のもとで自分を高めてもらえたらと思います。
工学院大学は、135年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!
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