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画像認識テクノロジーで日本の安全を守る研究者

公共施設・オフィスビルから商店や一般家庭まで、さまざまな場所に設置される防犯カメラや監視カメラ。それらが記録した膨大な映像から、最新の画像認識技術を用いて犯罪や災害のリスクを察知する―――。セコム株式会社IS研究所で13年間にわたって画像認識関連の研究者として活躍する高橋文彦さんに、現在の仕事の内容や学生時代に取り組んだことについて伺いました。

セコム株式会社
IS研究所 高橋 文彦さん

入社14年目 / 研究職 / 工学部機械システム工学科卒業 / 工学研究科機械工学専攻修了 / 機構研究室(ロボティクス研究室 指導教員:髙信 英明 教授)/趣味:野球観戦、子供と公園で遊ぶこと
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1. セコム株式会社IS研究所でどのようなお仕事をされていますか?

監視カメラで撮影される画像を用いて、自動で人物検出や行動解析を行う研究を行っています。行動解析で対象とする行動は、侵入やカバン放置などの様々な不審行動から混雑時の群集行動など多岐にわたっています。ときには130名ほどの研究所員総出で災害時などの異常状態を演じ、撮影した映像をもとに行動を解析することもあります。現在は、このような行動解析にCGを活用し、より多くのバリエーションに対応する研究に取り組んでいます。また、学会や展示会などで最新の研究動向を調査することもあります。

Q2. 現在の職業を選んだ理由は?

もともとドラえもんのようなコミュニケーションロボットを作りたいという思いがありました。ドラえもんというと、“ひみつ道具”が注目されることが多いですが、自分としてはドラえもんのようなコミュニケーション能力が今後の高齢化社会に必要だと感じていて、大学時代にはロボティクス研究室に所属しました。現在の研究所を選んだ理由は、ロボットの要素技術を研究対象としていて、セキュリティ以外にも医療分野など様々な事業領域があったことです。もちろん、勤務地や給与面などの勤務体系が魅力的だったことも、入所を決めた理由のひとつです。

Q3. 仕事のやりがいや魅力は?

IS研究所には、医療や情報通信、環境エネルギーなどさまざまな分野の研究を行っている研究者が所属しています。自分の専門分野だけでなく、多くの分野の新しい技術に触れられることが大きな魅力です。専門分野を超えたチャレンジを積極的に応援してくれる環境があることも、研究職としてはありがたいですね。また、これまでにない新しいものを作り出せることにも手応えを感じています。画像認識で検知できる対象や行動は実に幅広くて、倒れている人を感知したり、会場内にいる人数を把握することができます。そうした新しい技術が、実証実験などできちんと動作したときに大きな達成感があります。

Q4. 現在の仕事で必要と感じているスキルや能力は?

まずは、自身が担当する研究分野の最新動向や技術の詳細を知ることです。最近ではネットで最新の論文を読むことができるので、絶えずチェックしています。また、画像認識系のカンファレンスが行われるときには、プログラムの内容を把握し、気になるところは詳細を掘り下げていきます。これらの論文やカンファレンスは様々な国の著者が主に英語で発表するので、これまで学んだことのある文法や表現ではないこともあります。なので、英語力はもちろんですが、難解な文章をパスして分かった部分から数学力と国語力で大まかな内容を把握する能力も必要となります。私自身、学生時代から英語は苦手でしたが、研究室や研究所で少しずつ鍛えられました。最近は、翻訳ツールなども進化しているので、そのような技術も積極的に活用しています。
また、専門分野以外の事象についても、興味を持って観察し、自分だったらどうするかを考える習慣を持つことも大切だと思います。たとえばディズニーランドに遊びに行ったときに「このアトラクションの背後ではどんな技術が動いているんだろう?」と想像したり、子供が通う幼稚園のイベントで「どうやったら子どもたちが楽しめるんだろう」とほかの保護者と一緒に話し合ったり……。日常生活のなかにも思考を深めるヒントやアイデアはたくさんあると考えています。

Q5. 仕事の中で、大学で学んだことが活かされていると思うことはありますか?

「幾何学」や「プログラミング」などは、現在の仕事でも頻繁に使用します。わからなくても調べながら仕事を進めることはできますが、深い理解があるほうがより良いアルゴリズム構築を行うことができます。ただ、自分の場合は学生時代に“広く浅く”学んだという感覚があるので、何か一つでもより深い知識を身に付けておけば良かったとも感じています。たとえばプログラミングに長けた人は機能実装などがすごく速いですし、数学が好きな人は、計算が得意で、数学的な結論に早く到達することができる。自分の得意分野をベースに研究を展開できることは、さまざまな面で有利に働くと思います。

Q6.現在の仕事で役立っている“意外な”授業があれば教えて下さい。

「心理学」ですね。先ほどの「幾何学」や「プログラミング」は、直接的に仕事と関わる分野。一方、私たちは“人”を対象とした研究をしているので、人間の行動や生態に関連することがアルゴリズムのキーとなることがあります。たとえば群衆の中で犯罪者を見つける際、「犯罪者ならどんな行動をするだろうか。どんな表情をするだろうか」と考えるときに「心理学」は手助けになっています。理工系の大学で「心理学」は珍しいかもしれませんが、取っておいて良かったと感じる授業です。

Q7. 就職活動のときに意識したことは?

熱意を持って自分のやりたいことを伝えることです。私の場合、面接などでロボットの話をたくさんしました。社会に出てから求められる知識やスキルは、在学中にすべて学べるわけではありません。だからこそ、常に調べたり勉強しながら成長していこうという熱意がとても大切。それは、就職活動時だけでなく、社会に出た今も感じていることです。

Q8. 後輩たちへアドバイスをお願いします!

1,2年次は八王子、3年からは新宿への通学でしたが、宮城県出身なのでまずは八王子で東京の生活に慣れることができました。一方、新宿は駅と直結していて便利でしたし、大都市ならではの刺激を受けることができました。振り返れば、学生時代は、勉強や研究室の仲間との時間はもちろん、アルバイトも自分にとって良い経験だったと思います。八王子時代は、運転代行のアルバイトをしていたので人生経験豊富な方々と話す機会が頻繁にありました。一方、新宿時代は飲食店で働いていたので年下のスタッフとコミュニケーションを取ることが多かったです。幅広い年代とコミュニケーションを取ることで、視野が広がった気がします。学生のみなさんにも、さまざまな経験にチャレンジしてほしいですね。何が自分に合った仕事なのか、やりたいことは何なのか。それは、いろいろなことに挑戦してみないとわからないですから。

Q9. 今後の夢や展望を教えてください。

私には幼稚園生の子供がいるのですが、子供に何か話をするときは、相手(子供)の言葉で説明する必要があります。これは社会人相手でも同じことで、相手の立場や職種によって伝わりやすい言葉は変わります。相手のことを知り、理解し、自分のやりたいことをしっかり伝えられるようになっていきたいです。

在学時を振り返って……機械システム工学科 髙信 英明 教授から一言💡
高橋文彦さんは大変優秀な大学院生でした。研究室で熱心に研究に取り組み、修士論文に対する実直な姿勢が印象に残っています。就職活動のときに意識したことは「熱意を持って自分のやりたいことを伝えることです。面接などでロボットの話をたくさんしました」という話にも誠実さが表れています。工学院大学での研究はもちろんのこと、プライベートでもさまざまな経験を積んでいろいろなことに挑戦してきたようで、頼もしい卒業生です。
現在はセコム株式会社IS研究所でカメラ画像を用いた人物検出・行動解析の研究をされているということで、「学生時代に優秀だった人物は、社会で活躍できる」を証明してくれたと思っています。学会で会えることを楽しみにしながら、今後の活躍を期待しています。

工学院大学は、135年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!

工学部 卒業生インタビュー

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