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大学時代の豊富な実践経験が半導体製造装置の開発に役立った

工学部機械システム工学科卒業生の伊藤雄さん。現在はキヤノンアネルバ株式会社で、半導体デバイスの製造に用いられる成膜装置の開発を担当しています。開発の仕事をするなかで、今でも大学時代の教科書を見返すこともあるという伊藤さん。現在の仕事のやりがいや大学時代の学びが役に立った経験などを詳しく語ってもらいました。

キヤノンアネルバ株式会社
装置開発第一部 装置開発12課 伊藤 雄さん
入社10年目 / エンジニア / 工学院大学附属高等学校卒業 / 工学部機械システム工学科卒業 / ロボティクス研究室(指導教員:髙信 英明 教授) / 趣味:ドックラン巡り、スキー、スノボ、ライブ鑑賞
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1. これまでどのようなお仕事のキャリアを歩まれてきたのですか?

大学卒業後は技術系派遣会社に就職し、機械系技術者としてモノクロ複合機やバス車両の設計業務をしていました。その後、2012年5月に当社に転職し、現在は半導体スパッタリング装置(半導体や液晶の成膜に使用される、対象物の表面に均一に膜を作製する装置)の開発設計を担当しています。装置仕様の検討や設計、実機評価まで、開発の全工程の業務を行っています。さらに受注対応や、お客様先に納品した装置の不具合や改善活動にも対応しています。

Q2. 現在の職業を選んだ理由は?

機械系技術職を目指したきっかけは、工学院大学附属高校から大学に進学する際の学科説明会です。昆虫や動物の動作メカニズムを解析し、機構やセンサーで動作を再現したロボットを製作し、社会貢献できる技術として実用化を目指す……という研究を知り、大きな衝撃を受けました。そこで「将来誰も考えたことのない技術を自身で開発したい」と考えるようになり、開発職を目指すようになりました。
大学卒業後はさまざまな製品の開発を経験するために派遣会社に就職しました。そこで多種多様な機構とセンシング技術の集合体である装置の開発に興味を惹かれるようになり、現在の会社へ入社に至ります。
 将来的には、市場にない新しい技術を持った業界シェアNo.1となる装置を開発したいと考えています。

キヤノンアネルバ株式会社の社屋

Q3. 仕事のやりがいや魅力は?

開発した装置の売上が伸びると達成感が得られるのはもちろんですが、当社で開発した半導体スパッタリング装置を使ってクライアント様も半導体デバイスの開発を行っているので、私たちの開発には終わりがありません。日々、クライアント様のデバイス性能向上のために新たな要求が発生します。それに対応した開発や、需要に先回りした新たな先端技術開発にチャレンジしていくことにやりがいを感じています
また、半導体スパッタリング装置は非常に大きなサイズの機械なので、組み立てが完了したときはなかなか壮観です。設計時に思い描いた形と実物との違いを比べ、想像と実物とのギャップを確認したり、次回へ向けた改善点を探す作業も楽しんだりしています。

半導体スパッタリング装置の作業風景

Q4. 今の仕事で大変だったことは?

限られた条件や制約下での開発を要求された際などは、一人で考えていてもアイディアに行き詰まることがよくあります。そんなときは解決のヒントを得るために、上司や同僚と相談してアイディアを出したり、作戦を練り直したり……と、一人で抱え込みすぎないことを意識しています。
また毎朝晩、犬の散歩で心身ともにリフレッシュしています。たまに散歩中に仕事内容を頭の中で整理したりもしています。環境を変えることで新しい気づきを発見することもよくあります。

Q5. 現在の仕事で必要と感じているスキルや能力は?

機械工学や材料力学などの知識が役立ちます。大学の講義で学んだ知識をベースに、業務を通じて専門知識を身につけていくようなイメージです。開発には決まった答えはなく、自身で答えを導かなければなりません。大切なのは知識や経験を臨機応変に業務内容に応用すること。そして、仮説を立てて証明に至るまでのシナリオを計画し実行する能力が求められます。これは、大学の研究活動に通じるものがあるはずです。

Q6. 仕事の中で、大学で学んだことが活かされていると思うことはありますか?

金属材料の強度実験やマシニング、旋盤、溶接などの加工実習が非常に役立ったと実感しています。専門的な実習を経験したことで設計時に部品の加工イメージを持てるようになりました。私は転職組なので今の会社で現場実習をする機会がなく、大学時代の経験が非常に役立ちました。
また、材料力学の講義で身につけた知識も今の仕事に生かされています。どんな部品でも設計時は強度計算や寿命計算が必要で、その基礎となる計算手法を学べた講義でした。仕事をするなかで、当時の教科書を見返すこともあります。強度計算の公式から材料の厚みと強度の関係性を理解しているだけでも、開発の際、判断の精度が大きく変わってきます。

Q7.工学院大学を卒業してよかったと思うことは?

将来やりたいことに出会えたきっかけでもあり、工学院大学を卒業していなければ今の仕事に就いていなかったと思います。
また、環境の面でも敷地が広く、勉強に集中できる空間が整っているのが工学院大学の魅力です。学生も「みんなで力を合わせてやろう」という団結力と意気込みがある人が多かったので、学びへのモチベーションも上がりました。

Q8. 後輩たちへアドバイスをお願いします!

学生生活は自由な時間を長く取れる最後の期間です。バイト、趣味なんでもいいので、やりたいことにどんどんチャレンジしておいてください。趣味で得た知識や経験が実務に役立つことも多々あります。様々な経験は今後の皆さんの財産になるはずです。

在学時を振り返って……工学部 髙信 英明 教授から一言💡
伊藤雄さんは、附属高校から大学に進学する際の学科説明会でロボット研究を知り、卒業論文に励んだ結果、「将来誰も考えたことのない技術を自身で開発したい」との思いに至りました。一般論として「半導体スパッタリング装置の設計から実機評価まで」の全工程管理は、総合エンジニアができる仕事です。総合力は一朝一夕に身につくものではなく、日々の研鑽の結晶です。その総合力を伊藤さんは卒業論文と社会人経験から体得したのですね。
 キヤノンアネルバ株式会社は1967年に創立され、その後キヤノングループ企業となりました。このような歴史と伝統ある企業の第一線で工学院大学の卒業生が活躍しているサクセスストーリーは、工学院大学を目指す小中高校生の目標になるでしょう。

工学院大学は、135年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!

工学部 卒業生インタビュー

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