アジャイルにWebサービスの開発を一手に担う
日本を代表する大手電気通信事業者、KDDI株式会社。「au」など携帯電話事業の印象が強いですが、法人向け事業も広く展開しています。山口歩夢さんはソフトウェアエンジニアとして、同社とそのグループ会社であるKDDIアジャイル開発センター株式会社での業務を兼務しています。「毎日が楽しい」という山口さんに、現在のお仕事の内容や働き方、大学・大学院時代のことなどについて伺いました。
※アジャイル:「アジャイル(agile)」の名詞形である「アジリティ(agility)」とは、「敏捷」や「機敏」という意味。ITやビジネスでは、方針の変更やニーズの変化などに機敏に対応する能力を意味します。
Q1.現在のお仕事内容について教えてください。
入社1,2年目は、プラットフォームエンジニアとして、自社クラウドサービスの基盤開発や自動化ツールの開発に携わりました。入社3年目の今年4月からは、KDDIアジャイル開発センター株式会社に兼務出向し、サーバレスサービスを用いた法人向けWebサービスの開発を行っています。「アジャイル」は「俊敏」という意味で、「アジャイル開発」とは、日々変化するユーザーの要望に即座に応じ、迅速に開発を進める手法です。「ウォーターフォール」と言われる従来型の開発手法に比べてスピード感が格段に違い、業務としても常に何かを動かしています。また、機械学習を用いた画像認識サービスの開発やリクルート(採用)活動も業務に含まれ、記事執筆やイベント登壇等の情報発信活動も積極的に行なっています。
Q2.現在の仕事の魅力ややりがい、楽しいところを教えてください。
デザイン、フロント、バック、インフラと、フルスタックでサービス開発に臨めるのが今の職場の特徴です。全てを一手に担うことで専門的なスキルや知識を広く身につけることができ、エンジニアとして成長できること、市場価値を高めていけることに魅力を感じています。また、自分を成長させるためにも情報発信活動には力を入れていて、依頼されて登壇するだけでなく、若手メンバーを集めたコミュニティ運営やイベント開催など自主的に動くことを意識し、実践してきました。こうした活動を通して、社内外にどんどんつながりが増え、お互いに切磋琢磨しながら新しい情報や知識を吸収できることに大きなやりがいと喜びを感じています。何より、毎日がとても楽しいです。
Q3.現在はどのような働き方をされているのでしょうか?
チームで仕事(開発)をしていますが、さまざまなツールを使うことで、フルリモートでお仕事ができるので、会食だったり勉強会への参加といった予定がなければ、基本的には自宅で仕事をしています。ただ、私の業務はPCが使えてインターネットに繋げることができればどこでもお仕事ができるので、ワーケーション(ワーク×バケーション)なども積極的に行っています。これまでに大分、福岡、京都、神奈川に滞在しました。チームのメンバーにも北海道在住の方がいたりします。 また、KAG(KDDIアジャイル開発センター)にはワーケーションを後押しする制度があるので、弊社のメンバーはそれらを活用して、沖縄や北海道、静岡など、さまざまな場所にワーケーションに行っています。 私は、ワーケーションで地方に行くようになるまでは、首都圏以外の土地で暮らしたことがなく、他の地域に住むのはあり得ないと思っていたのですが、実際にいろいろなところで暮らしてみて、価値観が大きく変わりました。ワーケーションの魅力には、普段は知り合う機会のない多様な人たちと出会ったり、仕事以外でもプログラムやイベントに参加したり、ときには温泉でリラックスしたりと、世界が広がることにあるのかなと思います。このように、柔軟な働き方ができるという点でも、今の仕事は気に入っていて、色々な刺激を受けることで、仕事のモチベーションにも大いに繋がっています。つい先日(10月)、ワーケーションで別府の鉄輪温泉に訪れた時の気づき学びを、Noteにまとめて公開しているので、興味がある方にはぜひ読んで頂きたいです。
Q4.現在の職種には、どのような知識、能力、心構えが必要だと感じていますか?
大きく2つあると思います。1つは、自分自身のビジョン(やりたいことなど)をしっかりと持っていること。もう1つは、新しい技術について勉強したりアクションを起こすなど、「好き」を起点にスピード感を持って行動に移せること、です。この2つを持っている人は、この仕事に向いていると思います。一方、たとえ好きなものに対するモチベーションが高くても、”なぜ、これをやるのかという”ビジョンがなければ、躓いたときに再起するのが難しくなると考えているので、どちらも不可欠だと思っています。
Q5.大学・大学院時代に身につけておいて・経験しておいて、よかったことはありますか?
一つは、AsIs(現状)とToBe(理想)について深く考えること、もう一つは、考えるだけでなく行動に移すことです。学部4年生のときに初めて学会で発表をしたのですが、質疑応答で失敗して、たくさんの研究者の前で恥をかいたことがあったんです。また、手法がなかなか思いつかず、研究が滞ったこともありました。こうした壁を打破できたのは、現状の自分とあるべき姿を見つめ直して何をすべきかを考え抜き、自ら行動して学内外問わずさまざまな人に研究の説明をして意見をもらい、反映したから。失敗や苦労をした経験は人を強くすると、身をもって感じました。もともと負けず嫌いの性格に加えて、学生生活を通して考える力と行動力が身についたことは、今の仕事にも活きていると強く実感しています。
Q6.大学・大学院時代にやっておけばよかったと思うことはありますか?
長期のインターンシップですね。2週間程度しか参加したことがなかったのですが、入社して「この人はすごいな」と思う人は、インターンとして長く企業で働いた経験がある場合が多いんです。インターン以外でも、大学の仲間とアプリケーションを作っていたとか、ハッカソンで賞を取ったとか、大学の授業や研究以外の分野でいろいろな経験を積んできた人は強いなと感じます。僕の場合は、大学のプログラムでニュージーランドに短期留学に行ったのですが、異なる文化に触れたり、英語を使ったりした経験は、今の自分のマインドにも少なからず影響していると感じています。後輩の皆さんには、ぜひ、学業以外のことにも積極的に挑戦してほしいと思います。必ず、自分の糧になります。
Q7.就職活動時にはどのようなことを意識しましたか?
興味のある企業があれば、そこに勤める卒業生や社員の方とお話できる機会を自ら掴みにいくことです。特に卒業生の先輩方には、知り合いを紹介していただいたり、食事に連れて行ってもらったりと、とてもお世話になりました。また、面接については、とにかくシミュレーションをしまくっていました。自分の声や姿を録音・録画して良くないところを改善したり、与えられた時間ごとに話す内容のバリエーションを用意したり、何をどう聞かれても落ち着いて答えられるよう、万全の体制で臨みました。
Q8.工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?
切磋琢磨できる友人や先輩・後輩、熱心に指導してくださる先生に出会えたことです。特に、指導教官だった水野修先生には、研究手法の検討から論文の添削など、大変お世話になりました。なかでも学会に行く機会をたくさんいただいたことは、私にとって成長のきっかけになりました。また、水野先生は、学業面はもちろんのこと恋愛相談までできるような存在で、先生と学会で沖縄を訪れたことは、楽しい思い出として印象に残っています。
Q9.今後の夢や展望をお聞かせください。
エンジニアとしてのスキルを磨きつつ、今後は開発プロジェクト全体を回す役割も担えるようになりたいと考えています。その目標のために、先日、認定プロダクトオーナーと認定スクラムマスターの資格を取得しました。また、「山口の話を聞きたい」と思ってイベントなどに参加してくれる人を一人でも増やしたいですね。私自身、最初は漠然とエンジニアという職種に興味があり、働くなかでアジャイル開発という手法に出会い、さらにスクラムマスターやコミュニティマネージャーという仕事にも興味を持つようになりました。人の興味・関心は移り変わっていくものなので、キャリアを決めすぎないことも大事。さまざまなことにトライする中で自分の心の声に耳を傾けることが、どの方向に進むかを決める上で大事なことなのではないかと思っています。
工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!