新しい技術・製品を世の中に届け、新しい事業領域を開拓 #卒業生インタビュー
光通信システムを支える光デバイス製品を開発・製造する古河ファイテルオプティカルデバイス株式会社で、製品の開発・工程設計に携わる上野彰大さん。学生時代には、実験や研究に励む傍ら鉄道研究部の部長を務め、教職課程も履修しました。「やりたいことは全部やる」という上野さんに、現在の職業を選んだ理由や業務内容、大学時代のことなどについて伺いました。
Q1.現在までのキャリアについて教えてください。
2022年3月に大学院を修了後、技術系総合職として古河電気工業株式会社に入社しました。入社後2カ月間の研修を経て、NTTイノベーティブデバイス株式会社との合弁会社である古河ファイテルオプティカルデバイス株式会社に在籍出向し、現在に至ります。
Q2.現在のお仕事内容について教えてください。
インターネット回線のCMなどで、「光(回線)」という言葉をよく見聞きするかと思います。光通信は電気信号を光信号に変換する「送信器」、光信号を電気信号に変換する「受信器」、 そして光を運ぶ「光ファイバー」で成り立っていますが、この送信器では高精度な「発光デバイス」が必要になります。このデバイスの開発・工程設計が、私の仕事です。具体的には、開発段階のものを量産化したり、製品のバージョンアップするための実験を計画し、実験結果を踏まえ工程数や人件費を増やさずに製品に適用するにはどうすればいいのかを考え、工程設計をしています。良品率アップやコストダウンに加え、省電力化や小型化も求められます。
Q3.現在の勤め先や職種を選んだ理由をお聞かせください。
新しい技術や製品を世の中に届けたいという思いから、開発職を希望しました。また、大学・大学院で研究してきたこと(光デバイス技術)が活かせそうだったこと、技術をリスペクトする姿勢やおもしろいからやってみようという挑戦への寛容さといった社風に惹かれたことから、古河電気工業を選びました。将来的には光以外のものにも挑戦したいと考えていて、「20年後に、新しい産業をつくる」ことを目標に掲げているので、それが実現できそうな会社だというのも判断基準になりました。
Q4.仕事の魅力ややりがいについて教えてください。
工程設計が私の役割で、実際の実験や検査は別の担当が行います。設計や製造にも、それぞれのプロフェッショナルがいます。技術者・開発者同士が率直に意見を交わし合い、ときにはぶつかり合いながらもより良いものをつくるために協働することに、大きなやりがいを感じています。根底にはお互いへのリスペクトがあり、切磋琢磨できる環境があるのも魅力ですね。また、高速で大容量のデータをやり取りすることができる光通信は、IOWN構想をはじめとする大きな需要が見込まれており、自分が携わる製品が世の中に求められるものであることも、仕事のやりがいにつながっています。
Q5.学生時代に受講し、印象に残っている授業はありますか?
物理学実験、化学実験、応用物理実験など、学部生時代の実験の授業すべてですね。装置の使い方、実験計画の立て方から、実験結果の分析や解釈、レポートでの表現方法など、すべてのフローに今の業務につながる基本要素が詰まっていると感じます。また、何よりも大きかったのは、「実験が楽しい」と思える環境があったこと。多少時間がオーバーしても、やりたければ実験をやり続けられる、実験にのめり込むことをよしとする空気感があったことは、ありがたかったです。実験が好きで座学があまり得意ではなかった私は、そういう環境だったからこそ劣等感をもたず、自分を肯定し続けられのだと思います。「好きな実験を続けたい」という思いは、大学院進学のきっかけにもなりました。
Q6.学生生活を通して、力を入れたことや印象に残っていることはありますか?
鉄道研究部の部長を務めたことです。個性的なメンバーをまとめながら物事を進めていくのは大変でしたが、「人は何を考えて行動するのか」を学びました。鉄道研究部には好きなことへのこだわりが強い人が多く、他人からあれをやれこれをやれと言われてもなかなか動きません。そこで私が大事にしたのが、メンバーの「好き・やりたい」という気持ちを起点にすることです。一見すると大変そうなことも、それが好きな人にとってはまったく苦ではなく、むしろ喜びなんですよね。メンバー一人ひとりについて「このイベントにおいてこの人は何をしたいのか」を理解し、そこを任せることで、全体がスムーズに回るようになったんです。私自身、好きなことを好きなようにやってきたタイプでしたが、人は理屈ではなく感情で動くんだ、「好き・やりたい」ってすごくパワフルな感情なんだということを改めて実感しました。
Q7.就職活動において、意識したことや苦労したことはありますか?
まずは行動。いろいろ経験してみてから考える…というのが就活のポリシーでした。実は、学部生時代は進学ではなく就職を考えていて、1週間ほどのインターンシップを複数の企業で行いました。インターンシップ先で実感したのが、研究・開発分野で活躍する社員はほとんどが大学院修了者だったことです。自分がやりたい仕事に就くために大学院に行こうという決意と、進学したらあと2年間実験を続けられるんだという喜びを同時に感じたことが、とても印象に残っています。大学院時代の就職においては、「世の中へ自分が携わった製品を送り出せる」という視点で、やはり行動することを大事に、いろんな企業を見ていきました。
Q8.工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?
たくさんの人との出会いのなかで、自分が好きなことややりたいことを見つけ、あきらめずに挑戦できたことです。工学院大学には、自分が好きなものに熱中している人が多くて、自己肯定できる空気があるんですよね。そういう人たちに囲まれていたから、自分が好きなものに真っ直ぐに、貪欲に、突き進めたのだと思います。実験が好き、鉄道が好き、研究がしたい、でも教員免許も取得したい…そんな好きなこと・やりたいことがたくさんあった私ですが、工学院大学ですべてを叶えることができました。
Q9.今後の夢や展望をお聞かせください。
今の仕事をより楽しむこと、携わっている製品をより良いものにすることが、直近の目標です。長期的には、新しい事業領域を開拓し、20年後には新規事業を立ち上げるというビジョンを描いています。学生時代に、コロナ禍で一転した世界を目の当たりにして感じたのが、「世界って意外と簡単に変わるんだな」ということ。世界を変えるイノベーティブなことに挑戦したいと思い、大学院時代の先輩と組んでビジネスアイデアコンテストに出場したりもしています。また、プライベートでは、JR全線走破の達成や、行ったことのない国への旅を実現したいですね。次の休みには東南アジアに行く予定で、タイでは深夜特急に乗ってきます!
Q10.後輩へのメッセージをお願いします。
学生時代は、「やりたいことはすべてやる」という気持ちで、貪欲に行動することをおすすめします。私自身、就職活動、教員免許取得、研究活動、部活動…といろいろとやりたいことがあり、心身ともに厳しい時期もありましたが、すべてやり切りました。苦しくても続けられたのは、やっぱり楽しかったから。そして、そのすべてが、今の自分につながっていると感じます。「楽しい・好き・やりたい」という気持ちがあるなら、無理に取捨選択する必要はない。全部やったらいい。そう思います。
工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!