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地域住民がワクワクできる、まちの未来を描く #卒業生インタビュー

「まちづくり」に強い総合建設コンサルティング会社、株式会社オオバで、建設コンサルタントとして活躍する緒方景子さん。年齢も立場も異なるさまざまな人々の声に耳を傾けながら、行政や住民とまちを共創しています。現在の職業を選んだ理由や具体的な業務内容、大学時代のことなどについて伺いました。

株式会社オオバ 
名古屋支店 まちづくり計画部計画設計課 建設コンサルタント
緒方景子さん

入社5年目/建築学部デザイン学科卒業・建築学専攻修了(指導教員:篠沢健太教授)/趣味:映画鑑賞、ボードゲーム
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1.現在のお仕事内容について教えてください。

 行政などから依頼を受けて、都市計画マスタープランや立地適正化計画の策定、大規模災害に備えたまちづくり、地域活性化の支援などに携わっています。都市計画マスタープラン・立地適正化計画というのは、10年、20年後を見据えて長期的な視点でまちづくりのビジョンを描き、具体的な計画やアクションに落とし込む業務のこと。まちづくりの関係者や住民を集めた意見交換の場を通して、さまざまな立場の方の声や要望を吸い上げ、どこを目指すのか、そのために何をすべきなのかという構想を描いていきます。また、地域振興施設や公園緑地、防災などに係わる計画や区画整備・開発計画などのハード部分を担当することもあります。

Q2.現在の勤め先や職種を選んだ理由をお聞かせください。

 デザインに興味があり建築学部を選びましたが、大学で学ぶなかで、まちや建築物の構想やゾーニングのほうが自分に向いていると感じるようになりました。「建設コンサルタント」という職種を知ったのは、大学院時代のこと。都市計画の授業を受講し、担当の先生と話をするなかで知り、自分がやりたいことに近いと思い興味をもちました。就職先としてオオバを選んだのは、都市開発やまちづくりに強く、社員の方々の雰囲気が良かったから。数社から内定をもらい迷っていたときに、入社2年目の方とその上司とお会いする機会がありました。二人のお話や様子から、若手でも主体的に動いて活躍できる職場であること、そして、若手の努力を認めて温かく見守る空気感があることが伝わってきて、それが決め手になりました。

Q3.仕事の魅力ややりがいについて教えてください。

 まちづくりはその場所に暮らす人みんなに関わることであり、計画を策定する際には、協議会を設立したり住民を対象にしたワークショップを行ったりして、子育て世代や会社員、高齢者など、年齢も職業も異なる多様な人から意見を聞くようにしています。ときには「こういう場に参加しても、どうせ自分たちの意見は取り入れられないだろう」とネガティブな姿勢で臨まれる方もいて、場をファシリテートしたり意見を取りまとめたりするのは正直とても大変です。でも、できるだけ皆さんの声を反映しようと努めた結果、「良い計画ができたね」「まちのイメージ図に自分の希望が反映されていてうれしかった」「こういう場にまた参加してみたい」という声をいただいたり、「自分もゴミ拾いくらいからまちに関わってみようと思う」と計画づくりをきっかけに、まちづくりへ主体的に関わろうと思う方がいると、頑張ってよかった、また頑張ろうと思えます。

住民の方とワークショップをしている様子

Q4.現在の職種には、どのような知識、能力、心構えが必要だと感じていますか?

 建設コンサルタントに限った話ではないと思いますが、常にアンテナを張って、最新の動向や情報に触れることが大切です。まちづくりにおいても、トレンドや周辺地域の動きを知っているかどうかで、提案できるプランの幅が大きく変わります。
 
私はもともとインドア派で、東京で生まれ育ったので、いま勤務している東海エリアについても詳しくありませんでした。そんな私を見た上司から、「まちづくりに携わる人間の姿勢として、それでは良くないよ」と言われたことがありました。
クライアントとの会話の中で出てきた施設や、新しくできた道の駅など、話題にあがったところへ積極的に足を運んで自分の目で見て感じておいで。遊びのつもりで行けばいい。提案する人が楽しんでおもしろがらないと、いい仕事はできないよ。」
 このアドバイスを上司からもらってからは、色々な施設や公園を訪れ、地域のイベントなどにも意識的に参加するようになりました。今では、そうやっていろんなところに出かけることを楽しんでいます。

Q5.学生時代に受講し、印象に残っている授業はありますか?

 大学院1年生の後期に受けた、「まちづくりデザイン」の授業です。神奈川県小田原市の市街地におけるまちづくりの計画立案に、グループで取り組みました。まちの現状を調査・分析し、そこからまちの将来像を設定するプロセスは、今の仕事と重なる部分が大きいです。違う研究室のメンバーとグループを組んだこともあり、さまざまな角度から意見が出て興味深かったです。一方で、意見を取りまとめるのは容易ではなく、異なる主張にどう折り合いをつけるか、まちのメリットを活かしてデメリットを解消するにはどうしたらいいかを考えた経験は、今の仕事にも大いに役立っていると感じます。また、グループごとに出した最終案はバリエーションに富んでいて、まちづくりの答えは一つではないことを実感した授業でもありました。

小田原市の現地調査

Q6.学生生活を通して、力を入れたことや印象に残っていることはありますか?

 学部1・2年生のときに「八王子祭実行委員会」に所属し、会計を務めました。いま振り返ると、なかなかの熱量と真面目さで取り組んでいましたね。会計はお金の管理をする立場なので、メンバーに対して厳しいことを言わないといけないシーンもあります。
 後から「お金がなかったからできなかった」と言われるのは避けたく、みんながやりたいことを気持ちよくできるようにするにはどうしたらいいかを、中心メンバーで話し合いました。そこで意識するようになったのが、ただ「やりたい」と主張するのではなく、周囲の理解と協力を得るにはどうしたらいいかという視点で考え、行動すること。周囲に配慮しつつ、譲歩と主張のバランスを意識して交渉を行い、立ちはだかる壁をいかに突破するか。八王子祭実行委員会での経験は、今の自分にとっても大事なものになっています。

八王子祭実行委員会の集合写真

Q7.就職活動において、意識したことや苦労したことはありますか?

 就職活動を始めた当初は、「どれも興味はあるけど、絶対にやりたいわけでもない」という感じで、やりたい仕事や分野がピンときていませんでした。そこで、「やりたくない仕事」「興味のない分野」を削ることで絞り込み、最終的に建設コンサルに辿り着きました。また、思い詰めすぎず、自分を客観視することも心がけていました。というのも、「自分には何ができるか、どこが長所か」と自己PRする内容を考えると、「自分は大して何もできない。これといった長所もない」と落ち込んでしまった時期があって。ある方のアドバイスを参考に、自分を商品に見立てて「こういう感じのものですが、御社にどうでしょう?」と売り込むような感じで臨んだことで、気持ちがとても楽になりました。

Q8.工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?

 さまざまな分野の人と関わる機会があったことです。工学院大学の建築学部には30ほどの研究室があり、先生方の専門分野も多岐にわたります。私は、入学後にやりたいことが変わっていったので、選択肢が少ない大学だったらこの道をあきらめていたかもしれません。また、学生数も多く、同じ建築系でもやりたいことや興味・関心が多様な人と関わる機会があったこと、そういう環境に身を置けたことはとてもよかったと社会人になった今、改めて感じています。

Q9.今後の夢や展望をお聞かせください。

 今の目標は、地域住民が希望をもてる未来を描ける技術者になることです。現実と乖離しすぎると“絵に描いた餅”になってしまいますが、現実的なことばかり考えすぎると夢がなくなってしまいます。描いたビジョンを実現するためにはどういう事業を展開すべきか、その事業には何年くらいかかるのか…といった知識も必要になるので、さまざまな分野の業務を経験するなかで知識を身につけていきたいです。また、プライベートでは色彩検定を毎年受験していて、今年は1級に挑戦します。まちづくりにおいてもユニバーサルデザインの視点は大事なので、仕事にも活かしていきたいです。

Q10.後輩へのメッセージをお願いします。

 将来のためになるかどうかは意識せず、やりたいことを思いっきり楽しんでほしいと思います。「せっかくこれをしたのに役に立たなかった、将来につながらなかった」という視点で自分の経験を捉えてしまうと、せっかくの楽しい思い出や貴重な経験が、無意味なものに感じられてしまいます。どんな経験も自分にとっては糧になるはずなので、時間がある学生時代こそ、目一杯、楽しんでください。
 

在学時を振り返って……建築学部 篠沢 健太教授から一言💡
緒方景子さんには数年前、本学学生向けの「キャリアデザイン」という授業を担当してもらいました。後輩に向けて本学での経験や就職の体験談を語ってもらう姿は在学中と変わらないようでいて、でもすっかり変わったなぁとも思いました。
緒方さんは3年生後期から大学院修士課程修了までの3年半、研究室に所属していました。その間、積極的にリーダーシップを発揮して研究室全体を動かし、後輩を指導・鼓舞してくれました。また私が関わるランドスケープ国際専門家会議では、八王子祭実行委員会で培った能力を運営補助などにいかんなく発揮、活躍してくれました。
卒業制作では、立川市国営昭和記念公園周辺での公園緑地を用いた広域防災計画への対応を提案。大学院では自らのファミリーヒストリーを紐解きながら、長崎県諫早市において、地縁が薄れていく地方都市でのお墓の管理計画について検討していました。ゼミでの毎週のスタディ量、内容の深さは随一でした。いずれも簡単に答えの出るテーマではなく、今なお彼女の仕事の深いところに潜んでいるか…と、今回のnoteを拝見して思っています。
そうした問題意識も含めて、いつか緒方さんと今度は仕事を通じて話すことができたらいいな、と思っています。

工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!


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