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仲間と共に、大好きなガラスの研究開発に打ち込む #卒業生インタビュー

特殊ガラスの開発・製造を強みとする株式会社オハラで、高強度ガラスの開発に携わる森彩乃さん。子どもの頃からのガラス好きが高じ、学生時代にはガラスの研究に没頭。そのまま研究開発職に就きました。ガラス愛あふれる森さんに、現在の仕事内容ややりがい、大学時代のことなどについて伺いました。

株式会社オハラ 研究開発センター 研究開発部 特殊素材開発課
森 彩乃さん

入社4年目/化学応用学専攻修了 機能性セラミックス化学研究室(指導教員:大倉利典教授・吉田直哉准教授)/趣味:映画鑑賞、お酒、ネイル
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1.現在のお仕事内容について教えてください。

 スマートフォンやスマートウォッチのディスプレイなどに使用される高強度ガラスの開発を行っています。「ガラスのハート」という表現があるように、ガラスには割れやすいイメージがありますが、理論的には強度の高い材料なんです。一方、現在の技術では強度を高めると透明性が失われてしまうため、強度と透明性を両立させるための組成や製造法を研究しています。スマートデバイス市場は大きいので、各メーカーが開発に力を入れていて、開発や製品化にはスピードも求められます。

Q2.現在の勤め先や職種を選んだ理由をお聞かせください。

 無機物でありながら温もりや表情のあるガラスが子どもの頃から大好きで、大学・大学院ではガラス固化体について研究していました。紀元前から私たち人間の生活と共にあったガラスですが、実はわかっていないことも多く、固体なのか液体なのかという定義も定まっていないんです。研究を通して、そんなガラスの面白さにさらにハマってしまって、ガラス素材メーカーで働きたいと考えるようになりました。そして、ガラスの中でも超大型望遠鏡や人工衛星に使われるような特殊ガラスを扱うオハラに夢を感じ、就職先として選びました。

Q3.仕事の魅力ややりがいについて教えてください。

 自分が開発に携わったガラスが量産されているのを見たときは、感動しましたね。自分の手を離れることに一抹の寂しさを感じつつ、人々の生活を陰ながら支える材料になるのだと思うと誇らしくて、それがやりがいにもつながっています。また、実験でガラスを作るなかで、かわいいガラスや面白いガラスができたときは、思わず嬉しくなります。これは、ガラス好きならではのモチベーションですね。

Q4.現在の職種には、どのような知識、能力、心構えが必要だと感じていますか?

 研究開発職は個人で業務を遂行するイメージがありましたが、実際に働いてみるとまったく逆でした。開発や製品化において、一人でできることは限られていて、社内外の多くの人の理解と協力が必要になります。専門的な知識や技能はもちろん必要ですが、それ以上に、チームで仕事を遂行する協調性や人と積極的に関わる姿勢、そして、コミュニケーション力が不可欠です。

Q5.現在の仕事で大変なのはどんなところで、それをどう乗り越えていますか?

 高強度ガラスは競合の多い分野で、開発のスピード感がとても速く、技術的な難易度も高い領域です。それゆえに、自分一人では解決できない問題が次々と出てきます。壁にぶちあたったり、新しいアイデアが浮かんだりしたときは、周りの同僚や上司に話を聞いてもらうようにしています。みんなで知恵を出し合い、ああでもないこうでもないと議論しながら解決策を見出していくのは、苦しいですがとても楽しく、研究開発職の醍醐味だと感じます。

Q6.学生時代に受講し、印象に残っている授業はありますか?

 学部1年次に受けた「情報演習Ⅱ」では、プログラミングの基礎を学びました。近年は、素材メーカーでもDX(デジタル・トランスフォーメーション)やMI(マテリアルズ・インフォマティクス:機械学習による開発業務の加速化)がトレンドになっていて、私もプログラミングの勉強をしているのですが、大学で学んだ基礎があることで、ハードルを感じることなく取り組めています。

Q7.学生生活を通して、力を入れたことや印象に残っていることはありますか?

 音楽部の活動です。音楽部では、イベント運営などを担うイベンターを務めていました。音楽部はOB・OGとのつながりも強く、イベンターの役割を通してさまざまな年齢や職業の方と関わる機会が多くありました。高校時代までは人付き合いがあまり得意ではなく、交友関係も狭かったのですが、音楽部の活動を通していろんな人と広く付き合いができるようになりました。研究開発の仕事では、課題や知見を共有できる仲間が多ければ多い人ほど有利になるので、音楽部での経験は今の仕事にも大いに活きています。

音楽部の集合写真

Q8.工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?

 先生方の面倒見がとても良いことです。特に研究室では、学業のことからプライベートのことまで、たくさん相談に乗っていただきました。なかでも吉田先生には、卒業後も仕事や人生のことなどいろいろと話を聞いていただいていて、本当に感謝しています。また、同じ熱量で研究の話ができる一生の仲間が得られたことも、工学院大学で学んでよかったことの一つです。苦楽を共にした研究室の仲間とは今でも頻繁に会って、仕事の話や研究の話で盛り上がり、いい刺激をもらっています。

研究室の仲間と

Q9.今後の夢や展望をお聞かせください。

 製品開発に携わるなかで、機能的に良いものを作れば売れる訳ではない、ということを痛感してきました。機能だけでなく、魅力や愛着を感じてもらえるようなストーリーのある製品設計をしていきたいと考えています。また、研究開発に軸足を置きつつ、マーケティングや広報の活動もしていきたくて、勉強も始めています。大好きなガラスの魅力を、もっとたくさんの人に知ってもらいたくて。開発の視点から広報戦略まで考えることのできる人材になり、ガラスファンを増やしていけるような仕事ができたらいいなと考えています。

Q10.後輩へのメッセージをお願いします。

 大学の後輩たちには、「大学ってとても恵まれた環境なんだよ」と伝えたいですね。研究開発職は、講義やセミナーを受けて専門知識を深めることも業務の一環なので、かなりの頻度で受講するのですが、とても費用がかかることに驚きました。多様な分野の専門家(先生)がいて、しかも質問し放題という環境は、なんて恵まれていたんだ…と今になって思います。ぜひ、先生たちにたくさん質問をして、専門的な知見をいっぱい吸収してほしいと思います。

在学時を振り返って……先進工学部 吉田 直哉准教授から一言💡
森彩乃さんは、リン酸塩ガラスを用いたCs吸着粘土鉱物のガラス固化とCsの選択的な溶出と回収の検討というテーマで修士論文をまとめました。リン酸塩ガラスの合成やその物性評価・制御について、いくつもの壁に阻まれながらも、努力と 工夫を重ねていた姿が印象に残っています。こうした取り組みを経て、専門知識や技術だけでなく、未知のことにも粘り強く取り組んでいく力を身につけられたと思っています。 好奇心旺盛で明るく人懐こい人柄は変わらず、会社でも活躍されていると聞いております。今後とも益々ご活躍ください!

工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!


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