建築のプロフェッショナルとして、まちづくりと場づくりを支える―。
日本を代表する不動産デベロッパーとして、さまざまな施設開発やまちづくりを行う野村不動産株式会社。「地域や住民に寄り添ったまちづくりを考え、実現していきたい」という想いから同社に入社した北村彩夏さんは、建築部に所属し、商業施設や物流施設の開発に携わってきました。入社以来4年間でさまざまなプロジェクトに取り組んできた北村さんに、現在の仕事の魅力や自身の糧になっている学生時代の経験などについてお話を聞きました。
Q1. 野村不動産株式会社ではどのようなお仕事をされていますか?
法人のお客さまを対象とした賃貸不動産の開発に関わる事業推進の仕事をしています。入社3年目のはじめまでは商業施設、その後は物流施設を担当しています。土地取得段階のプラン作成やコスト検証、実際に開発する建物の設計監修やゼネコン選定、工事着工から竣工までのスケジュールやコスト管理、テナント工事の調整など、社内外の関係者との調整を含めて、業務は多岐に渡っています。
Q2. 現在の職業を選んだ理由は?
工学院大学に入学するときから「まちづくりを通して社会貢献がしたい!」という思いがありました。また、大学在学中の研究室でのプロジェクト活動を通じて、「地域や住民に寄り添ったまちづくりを考え、実現していきたい」と考えるようになりました。現在の職業は、そのような軸で選んだものです。行政や建設コンサルタントに勤めることも検討しましたが、お客さまや住民に求められるまちづくりを自分の手で実現できると考えたことから、デベロッパーを志望しました。
野村不動産への入社の決め手となったのは、土地の取得から取り組み、全国の必要な場所に必要な不動産を提供できること。そして、地域や住民に寄り添ったまちのあり方を提供できると感じたことでした。
Q3. 在学中に入社した会社やその職種を選ぶきっかけとなった経験はありましたか?
インターンシップへの参加と社員訪問ですね。とくにインターンシップでは、現在の所属部署である建築部での現場配属を経験しました。
その際、ある物件の現場定例会に同行したのですが、建設中にもかかわらず、エントランスのデザインなどについての活発な議論が行われている光景を目の当たりにしました。このように、細部に渡って粘り強くこだわることができる会社でなら、まちづくりと真摯に向き合っていける。そのように感じました。
また、社員のみなさんとお話させていただくなかで、熱意や責任を持って仕事に取り組まれている姿勢も入社の決め手のひとつになりました。
Q4. 仕事のやりがいや魅力は?
担当するプロジェクトで施工が進み、どんどん建物が形作られていく様子を見られることが大きな魅力です。また、竣工した建物が実際に利用されている光景を見たときにもやりがいを感じますね。
とくに印象的だったのは、初めて担当した商業施設のオープン日に、たくさんのお客さまが集まっているのを目の当たりにした瞬間です。とても感慨深かったですね。一方でデベロッパーの仕事は、まちやたくさんの人に影響を与える責任の大きな仕事であるとも感じました。
デベロッパーの事業のために必要な建物は、実際には施工してくれるゼネコンや設計してくれる設計者がいてこそ作り上げられます。そのことも、忘れてはいけないと強く実感しました。
Q5. 現在の仕事で必要と感じているスキルや能力は?
担当物件に対して愛着や責任を持ち、自分の考えを持って臨むことが大切だと思います。どのようなことをやってみたいのか、やるべきなのか、を常に考えています。そのうえで、自分の思いを正しく相手に伝えられるようにする力も大切だと感じています。
プロフェッショナルとして担当物件と向き合うためには、電気設備や機械設備も含めて建物のハード面すべてに対して幅広い知識が求められます。そのため、さまざまな知識や経験を吸収する好奇心も必要だと思います。
Q6. 仕事の中で、大学で学んだことが活かされていると思うことはありますか?
学生時代に経験して良かったと思うのは、他者と一緒になにかを作り上げていく経験ができたことです。
私は学部1・2年時に八王子祭実行委員会に所属し、ステージ企画のMCや運営を担当しておりました。当日はたくさんのお客さまにご来場いただくことができ、チームで何かを作り上げる楽しさを感じました。また、学部3年後期以降は遠藤新研究室に所属し、実際のまちを対象に、まちの将来像の提案や公有地活用などのプロジェクト活動を行ってきました。修士1年時にはリーダーとして後輩たちと一緒に活動を行ったことで、リーダーシップも身につけることができました。
コミュニケーションを取りながら合意形成を図り、一つの目標に向かっていくことは、関係者が多数存在する現在の仕事と通じることだと思います。
Q7. 在学時に印象的な授業や役に立った授業はありますか?
学部3年前期の「まちづくり演習」は、まちづくりを進めるためのプロセスを総合的に学べる講義でした。「一つのまちを作り変える」という課題にチームで取り組んだことで、住民の気持ちに寄り添ってまちづくりを進めることが大切であると学びました。チームで決めた将来像に向かって自分たちの思いを形にしていくという経験は、さまざまな部署と協業して事業を進める現在の仕事にも活かされていると感じます。
Q8. 就職活動のときに意識したことは?
修士1年時は、リーダーとして研究室のプロジェクトを進めながら、たくさんの講義の課題にも取り組む必要がありました。「就職活動に割ける時間が限られている」という課題を乗り越えるためにも、修士1年の夏のインターンシップ選考の時点から自己PRや志望動機を書き溜めておきました。そのことで、本選考のエントリーシート作成をスムーズに行うことができたと思います。インターンシップの選考においては、本選考時も就職支援センターでエントリーシートの添削を行ってもらい、簡潔にかつ自分でも納得のいく内容で提出することができました。
Q9. 今後の夢や展望を教えてください。
まだまだ一人前とは程遠いですが、今後も不動産開発の建築担当者として関係者との信頼関係を大切にし、より良い施設を作り上げられるよう、初心を忘れず精進していきたいと思います。いつかは、不動産開発も含め、多くの人たちの交流が生まれるような公共的な空間づくりにも携わりたいと思っています。
工学院大学は、135年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!