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コストの算出・調整で建設プロジェクトを支える #卒業生インタビュー

 都市や建築の設計・デザインを総合的に担い、社会に新しい価値を生み出し続ける株式会社日本設計。工学院大学新宿キャンパスのビルも同社が設計を担当しました。同社のコスト設計部で建築にかかるコストマネジメントに従事するのが、松井加南子さん。「まち歩きが好き」という松井さんに、現在の職業を選んだ理由やお仕事内容、大学時代のことなどについて伺いました。

株式会社日本設計
コスト設計部 松井加南子さん
入社3年目/建築学部建築学科/建築生産 遠藤和義研究室(指導教員:遠藤 和義教授)/趣味:ピアノ、旅行
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1.現在のお仕事について教えてください。

 建物を建てるためのコストがいくらかかるかを概算・積算する仕事をしています。具体的な業務としては、図面をもとに、コンクリートがどれだけ必要でいくらかかるか、タイルはどうか、壁紙はどうか…といった数量や値段などを一つひとつ算出しています。現在担当しているのはリノベーション物件で、限られた予算内でどこをどう改修するかを考える計画段階から携わっています。また、発注者に現状を報告するための資料の作成や、資材の値上がりなどによる追加予算の請求、積算事務所から受領した内訳の確認や内容のすり合わせ、過去の資料・情報の整理なども担当しています。

Q2.今の勤務先や部署を選んだ理由やきっかけをお聞かせください。

 東京・日本橋や高校時代に訪れたオーストリアなどの、古いものと新しいものが混在した街並みが好きでした。再開発物件やリノベーション物件に興味を持ち、これらを強みとする会社で働きたかったため、日本設計を志望しました。また、大学で受講したファシリティ・マネジメントの授業をきっかけに、建物は建てるのにも運用するのにもコストがかかることを改めて学びました。なかでも建物を建てるうえで欠かせない建築段階のコストに関心があったのですが、コスト管理の具体的な業務については詳しく理解していませんでした。そこで、設計事務所でコストを扱う仕事をしていた研究室の先輩を訪問し、仕事内容ややりがいなどについて伺ったことがきっかけで、自分もこの仕事がしてみたいと思い、コスト設計部で働くことを希望しました。

Q3.仕事の魅力ややりがいについて教えてください。

 実務的なことは、コスト設計部に配属されてからイチから学んでいます。自分の知識不足を痛感することも多いのですが、わからないことは積極的に先輩に聞いて解決するようにしてきました。先輩たちに教わりながらさまざまな業務に取り組む中で、コストに関する知識や理解が日々深まっている感覚を得られることが、やりがいにつながっています。最近では、以前に担当したプロジェクトでの知見をもとに自分で仕事の進め方を考えられるようになり、経験が糧になっていることを実感しています。

Q4.どのようなシーンで、大学での学びが活きていると感じますか?

 卒業研究では、3D空間で建物を建てる「BIM(ビム)」というソフトを使って、建物のライフサイクルコストを算出する研究を行なっていました。その過程でBIMの基本的な操作方法や図面やデータの見方などを習得したのですが、入社後にBIMを使ったプロジェクトを担当したことがあり、業務をスムーズに進めることができました。工学院大学では建築デジタル教育に力を入れていて、学生時代にBIMに触れることができたことは、いま振り返ってもとても貴重で有意義な経験だったと思います。

Q5. 大学生活でもっとも印象に残っていることは何ですか?

 3年次に参加したイギリス留学(ハイブリッド留学)です。私はこの留学制度に惹かれて工学院大学建築学部に入学したので、入学前からとても楽しみにしていました。3ヶ月の留学期間中はイギリス・カンタベリーに滞在し、素晴らしい街並みや建築物をたくさん見ることができました。現地の大学で学ぶ機会もあり、実際に街に出て調査を行う授業やイギリスの文化や建築について学ぶ授業を現地の学生と一緒に受けました。イギリスの大学生はみんな自分から積極的に発言し、グイグイ前に出るんです。最初は驚いてカルチャーショックを受けましたが、その姿が刺激になり、帰国後に始まった就職活動では、自分は何を考えてどうしたいのかをしっかりと相手に伝えることを強く意識することができました。

エディンバラの街並み
ハイブリッド留学での集合写真

Q6.工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?

 一つは、海外留学に行けたことです。3年次のイギリスでのハイブリッド留学に先駆けて、1年生の春休みにはオークランドにも短期留学をしました。そこでは建築以外の学部の人たちとも知り合え、また現地の文化などにも触れられ、とても楽しく、視野が大きく広がりました。もう一つは、入学後に専門分野を決められたことです。工学院大学の建築学部では、1、2年次は建築について広く満遍なく学び、その中で自分の興味関心のある分野を見つけていくことができます。私自身、入学時には漠然と建築について学びたいと思っていましたが、いろいろな授業を受ける中で次第に施工や建物の成り立ちに興味を持つようになり、4年次より生産系の遠藤研究室で学ぶことを決めました。また、遠藤先生に研究室の先輩を紹介していただいたことがきっかけでコスト設計の業務に興味を持ったので、紹介していただいたこととご縁にはとても感謝しています。

Q7.ご自身の就職活動を振り返り、後輩にアドバイスをお願いします。

 就職活動を通して実感したのが、ブレのない一貫した発言が大事だということです。そのために、自分は入社後に何をやりたいのかを明確にして、その理由を深掘りしたり、その目標を実現するためにこれまでに何をしてきたのかを振り返ったりして、自分なりにまとめていました。やりたいことに向かって経験を積むという点では、自分の進みたい分野につながる職種で、一定期間のインターンに参加するのがおすすめです。私は、施工図を作成している会社で2週間ほどインターンをしました。インターンを経験したことで、働くことに対して具体的なイメージができ、また、就職活動時の自己PRの充実度を上げることにもつながりました。

Q8.今後の夢や展望をお聞かせください。

 まずは、今の仕事を着実にこなし、さまざまな状況に対応できるようになることと、自分の得意分野を見つけることを目標にしています。最近では、業務と並行して勉強していた一級建築士の試験に合格しました。コスト管理士の資格取得も目指しているので、目下、試験勉強中です。また、長期的な目標としては、多岐にわたる業務を経験していく中で、コストコントロールに不可欠なプロジェクト全体を俯瞰して見る力を身につけたいと思っています。そして、いつかは美術館や博物館などの特殊建築物のリノベーションや、再開発に携わるのが夢です。

在学時を振り返って……建築学部 遠藤 和義 教授から一言💡
松井加南子さんは、私の研究室で、本学八王子キャンパス3号館の改修工事をBIMを用いてモデリングし、工事前後のランニングコストも比較して、改修工事のライフサイクルコスト低減効果を定量化するテーマで卒論をまとめました。
卒論で取り組むには少し難しいテーマでしたが、文献や詳しい先輩にあたって、うまくデータをまとめることができました。
日本設計のような大手組織設計事務所への入社は、大学院卒が一般的ですが、卒論ともつながる目的意識をはっきり持って、難関を突破しました。内々定となった日を私もよく覚えていますが、その時の気持ちをずっと持ち続けて、頑張って欲しいと思っています。

工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!


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