滲彩土浦 - 歴史と自然が息づく土浦市へ おもてなしの心で彩るまちづくり提案の魅力
茨城県土浦市は、悠大な霞ヶ浦を擁し筑波山を臨む、水と緑に恵まれた都市です。
市内には土浦城や亀城公園、水運で栄えた街並みがあり、歴史と伝統がまちに息づいています。近年はサイクリングロードであるつくば霞ヶ浦りんりんロードの施設整備により、JR土浦駅前には観光客のにぎわいがみられます。
「まちづくり・デザイン競技」(主催:公益財団 都市づくりパブリックデザインセンター)では、例年、全国の多様な都市が課題として提示され、まちのニーズに応じた提案を行います。第26回の舞台となった茨城県土浦市では、JR土浦駅・霞ヶ浦沿岸から、土浦城址である亀城公園を結ぶ「土浦駅前通り周辺地区」に、にぎわいを生む提案が課題になりました。
滲彩(シェンツァイ)土浦
まちづくり学科 遠藤新研究室のプロジェクトチームは、建設・建築業界の有名企業が受賞する中、見事土浦市長特別賞を受賞しました。
遠藤研究室の提案タイトルは、「滲彩(シェンツァイ)土浦」。地元への愛着が滲み、地元市民・観光客のにぎわいが土浦を彩るという意味を表しています。また「滲彩」と同音である「神彩」は「優れた風采(見た目、姿)」を意味することから、優れた風采をもたせることをコンセプトとし、5つの方針から16のプロジェクトと7つの具体的な提案を行いました。
5つの方針には、土浦市をかたちづくる歴史や自然、自転車生活といった特長がまとめられています。提案では、それぞれの方針ごとに検討した内容が最終的に地図上で重なることで、エリア全体が活気づくように意識されました。
6月18日に開催された土浦市長特別賞の表彰式では、メンバー7名が安藤真理子市長から表彰を受けました。安藤市長からは、しずくが滲んでいくコンセプトの独創性や、提案から、まちで暮らす人へのやさしさやおもてなしの心、まちへのぬくもりが感じられる点が評価されました。
まちの機運を高める取り組み
表彰式では、市長、副市長に滲彩土浦の提案内容をあらためて発表。質疑応答では副市長から、まちの人々も巻き込む機運醸成のために必要なことが質問されました。
遠藤研究室では、実際に市役所や企業・団体と共同で、埼玉県草加市や静岡市の草薙駅周辺、川崎市のプロジェクトに取り組んでいます。
メンバーは、それらの事例を挙げながら、
「お祭りなどの機会を利用し、地元の方々と都市模型などを一緒につくる作業を通して、地元の方にも実際にまちづくりに参加し体験してもらうこと」「広報誌などでまちの変化やまちの魅力が伝わるようにプロジェクトの状況を発信すること」などの取り組みが大切だと説明しました。
研究室では、プロジェクトの進捗を毎年冊子にまとめています。当日は持ち込んだ冊子をもとに、公園の整備や駅前広場のデザインなど、実際に実現したまちづくりの事例を解説し、市長や副市長、土浦市職員の方々とまちづくりを軸に会話が弾みました。
「滲彩土浦」プロジェクトの舞台裏
緊張のプレゼンを終えた遠藤研究室の皆さん。代表の山本さんに、提案への想いや研究室についてインタビューしました!
ー 受賞おめでとうございます!まずは率直な気持ちを教えてください。
山本さん:
率直にとても嬉しいです!今回のコンペは自分達が初めて参加したコンペでした。難しい点が沢山ありましたが、そのような中で提案を形にでき、土浦市長特別賞をいただけたことに感謝しています。
ー 今回の提案で、特にこだわったポイントを教えてください。
山本さん:
自転車を利用して現地を広く調査し、土浦市の現状と理想の理解に時間をかけた点です。例えば、中央一丁目を子育ての拠点としたいという市の考えを取り入れ、「土浦版ネウボラ」によって子育て支援を行っていく提案を行いました。市の現状と理想をしっかりと調査したことが今回の受賞に繋がったと考えています。
ー今回が初めてのコンペとのこと。どのようなスケジュールだったのでしょうか。
山本さん:
大学3年生の12月頃にメンバーを決定し参加を決めました。その後1月に現地調査を行い、地図上ではわからない土浦市の課題・資源を確認し分析しました。2月に方針と軸を決め、具体的な政策と提案に落とし込み、プレゼンシートの作成、提案のブラッシュアップを行い、3月頭に提案を提出しました。
ー 今回のプロジェクトで楽しかったことや、大変だったことを教えてください。
山本さん:
メンバーそれぞれの学科で学んできたこと、最も重要視したいことが異なるため、意見をまとめていくことが非常に難しく感じました。しかし方針を5つに決め、得意・興味のある分野をそれぞれが調査し、会議ですり合わせを行うことで、意見がまとまりやすくなり、あらゆる面からまちを捉え、具体的な提案をすることが可能になりました。
建築学部では、自分の所属学科ではない学科の研究室にも所属することができます。まちづくり学科 遠藤研究室にも、建築学科や建築デザイン学科の学生がおり、様々な視点からまちを分析します。
他学科から遠藤研究室に進んだメンバーは、大学の授業を通してランドスケープや実践的なまちづくりプロジェクトに興味が湧いたことや、遠藤先生の人柄に惹かれたことが研究室を選んだ理由だと教えてくれました。
様々な人にアプローチ可能なまちづくりの魅力
最後に山本さんに、まちづくりの魅力や将来の目標をお聞きしました!
ー 山本さんがまちづくり学科、遠藤研究室を選択した理由を教えてください。
山本さん:
私はイベント、フェスなど人と人が楽しさを共有できる空間が大好きで、そのような空間を作れる人になりたいと考えています。そのため、人の行動やストリート文化を研究し、まちづくりにおいて「人」を重要視している遠藤研究室に興味をもちました。また、先生とお話する機会が増えるに連れ、私も面倒見がよく一人一人にしっかりと向き合ってくれる先生の性格に惹かれました!
ー まちづくりを研究する面白さはどのようなところにありますか?
山本さん:
多くの人の暮らしに貢献できる点です。そのまちに暮らす人だけではなく、職場や学校がある人、観光で訪れる人など、様々な人に対してアプローチが可能である点がまちづくりのおもしろさだと思います。
ー 将来の夢や目標を教えてください。今大学で学んでいることをどのように生かしたいですか?
山本さん:
人の活動に注目し、人と人とが楽しさを共有できる空間づくりをするためには、市や住民のニーズを適格に捉える必要があると考えています。今回のコンペで土浦市の現状と理想の理解に時間をかけ、ニーズの捉え方を学んだ経験を活かして、楽しさを共有できる空間をつくり、多くの人の暮らしに貢献していきたいです。
遠藤新研究室では現在、埼玉県草加市の「草加プロジェクト」、静岡市草薙駅周辺の「草薙プロジェクト」、川崎市の「カナドコロ」で、実践的なまちづくりに取り組んでいます。さまざまな地域で、まちの人々を想うぬくもりのある提案が生まれています。
▼研究室の活動はHPでもご覧いただけます!