実践と体験で「いざという時」に備える 防災訓練を実施
工学院大学では、毎年、新宿キャンパスと八王子キャンパスにおいて防災訓練を実施しています。
今年も学生・教職員が一体となり、実践的な訓練を行いました。当日は、一部授業を中断しての避難誘導訓練や、教職員による初動対策本部の設置訓練を行い、災害時の安全確保と迅速な対応の重要性を再確認しました。
防災訓練の後は、新宿キャンパスにおいて、都市防災を専門とする村上研究室による体験型の防災訓練と能美防災株式会社の提供による火災臨場体験VRなどの体験型の防災プログラムが行われ、参加者は楽しみながら都市防災に必要な知識と行動を学びました。
今回のnoteでは、その時の様子について紹介します!
体験型訓練で都市防災を考えるきっかけに
新宿キャンパスでは、都市防災を専門とする村上研究室による体験型の防災訓練が行われました。
村上研究室代表 瀧本さんに、今回の企画についてお話を伺いました。
ー体験型訓練を企画した意図を教えてください。
瀧本さん
多くの方が小学校から高校にかけて避難訓練を経験していると思います。従来の訓練では「建物から外に出る」ことが正しい避難行動とされてきました。しかし、都市部の高層ビルに囲まれた工学院大学新宿キャンパスのような環境では、その行動が必ずしも適切とは限りません。そこで、都心に位置するビル型キャンパス特有の環境における適切な避難方法を知ってもらうことが必要だと考え、今回の体験型訓練を企画しました。
ー企画にあたり、大変だったことはなんですか?
瀧本さん
参加者を増やすための工夫をしたことです。村上先生から「どれだけ良い企画を準備しても、実際に参加してもらえなければ意味がない」というアドバイスをいただき、どうすれば多くの方に興味を持ってもらい、参加しやすいと感じてもらえるかを考えました。その結果、各コンテンツの体験時間を短縮し、参加しやすい環境づくりに力を入れました。
ー今回の企画の注目ポイントを教えてください。
瀧本さん
防災の知識を凝縮した点です。私たちは、新宿キャンパスの防災マニュアルを徹底的に読み込み、災害発生時における正しい避難行動を学んでいただけるよう準備しました。今回の訓練では、3つの体験型コンテンツを通じて、都市型防災に必要な知識と行動を身につけていただければと思います。
ここからは、村上研究室が企画・運営した3つの体験型コンテンツについて紹介します。
脱出ゲーム
ー企画の概要について教えてください。
瀧本さん
工学院大学新宿キャンパス特有の高層ビルにおける災害時の対応をテーマにした「○×クイズ」に挑戦し、脱出ルートの攻略を目指すゲームです。正解を積み重ね、すべてのクイズをクリアした方には非常食のプレゼントを用意しました。
ー企画する上で工夫した点について教えてください。
瀧本さん
工学院大学ならではの防災知識を効果的に学べるよう、クイズの内容にこだわりました。特に、本学のような高層建築では、災害時にエレベーターを使用中であるケースも想定されます。その際に取るべき適切な避難行動や対処法をクイズに盛り込み、楽しみながら正しい知識を身につけてもらえるよう工夫しました。このゲームで学んだことが、いざ災害が発生した時に思い出され、冷静に適切な行動を取る助けになれば嬉しいです。
防災備蓄食のアレンジ炊き出し
ー企画の概要について教えてください。
北田さん
災害時に備え、防災備蓄食の重要性を知ってもらうため、研究室の皆で考案した「非常食を美味しく食べるためのアレンジレシピ」の紹介と、防災備蓄食の配布を行いました。当日は、防災備蓄食の白米ときのこスープを活用したキノコリゾットの試食体験も実施しました。
ー企画する上で工夫した点について教えてください。
北田さん
簡単に美味しく作れることを意識しました。今回のキノコリゾットは、電子レンジで手軽に作れる一方で、非常時には電気が使えなくても調理可能です。また、防災備蓄食は備蓄しても食べずに賞味期限が切れてしまうことがよくあります。今回の企画を通じて、防災備蓄食が美味しいことを体験してもらい、「美味しく食べられるなら常備しておこう」と防災準備のきっかけになればと思います。
大声コンテスト
大声コンテスト班リーダーの藤田 祐也さんにお話しを伺いました!
ー企画の概要について教えてください。
藤田さん
災害発生時、瓦礫に埋もれたり、自力で避難が困難になる場面を想定し、大声を出して助けを求める訓練として大声コンテストを企画しました。参加者には、こちらが用意した災害時に必要なセリフを叫んでもらい、その声の大きさを計測しました。上位者には景品も用意し、楽しみながら参加してもらいました。
ー企画する上で工夫した点について教えてください。
藤田さん
参加者が恥ずかしさを感じずに大きな声を出せるよう、あらかじめ発声するセリフを決めておきました。また、コンテスト形式を採用することで、楽しみながら自然と声を出せる雰囲気を作りました。この体験を通じて、災害時には迷わず大声で助けを求めたり、避難を呼びかけたりする行動につながってほしいと考えています。
火災臨場体験VRで災害発生のリアルを体験
当日は、能美防災株式会社の提供による「火災臨場体験VR 混乱のオフィス」の体験訓練も実施されました。
能美防災株式会社は、創立100年を超える国内最大手の防災設備機器メーカーです。「火災臨場体験VR」は、オフィスビルでの火災や大地震が発生した際の恐怖と混乱を、プレイヤーが空間内の一員としてリアルに体験できるVRキット。災害の危険性を身近なものとして感じ、防災教育や訓練への意識を高めるために開発され、これまでに企業の防災訓練などで6000人以上が体験しています。
「火災臨場体験VR」での避難を体験した学生たちはVRの世界に没入し、思わず周囲の景色を見回したり、声のする方を振り向くなど、そのリアルさに驚いた様子でした。また、非日常的な映像を見て「自分も体験してみたい」と参加する学生も多くいました。
また当日は、能美防災株式会社に勤務する本学の卒業生2名が来訪しました。能美防災では、部署に寄らず多くの社員が「火災臨場体験VR」を体験しており、お二人も当日の体験訓練の運営にご協力いただきました。
ー普段はどのようなお仕事をされていますか?
宇田さん
CS設備本部で、既存物件の保守やメンテナンスの業務を行っています。防災設備の会社としてお客様との関係を長期間にわたり築いているため、人とのつながりや信頼されることにやりがいを感じます。就職して12年経ちますが、働き続ける上では仕事の内容だけでなく、職場の雰囲気や人間関係も大切だと感じます。
元村さん
私も宇田さんと同じ部署で働いています。約100人の部署内には、工学院大学の卒業生が5人在籍しています。オフィスビルだけでなく、文化財や様々な施設のバックヤードで、物件ごとに異なる設備を見ることができるのは非常に興味深いです。
ー火災臨場体験VRを通じて学べることを教えてください。
元村さん
防災設備は、日常を支えるために欠かせない設備ですが、バックヤードなどの見えないところに設置されるため、普段の生活ではあまり意識されないことも多いと思います。
火災臨場体験VRは、災害発生時のリアルな状況を再現するだけでなく、火災の煙の広がり方や非常灯の位置などもこだわって制作されています。このコンテンツを通じて災害時に起こり得ることを知り、災害への備えの大切さや、消防・防災設備が皆さんの生活を守る上で重要な役割を果たしていることを実感していただければと思います。
防災訓練では、日常から非日常への心の切り替えが求められますが、「火災臨場体験VR」を通じて自分自身を非日常空間に置くことで、災害が起きた際の対応を想定し、何をすべきか、どの声に従うべきかなど、実際に自身が取りがちな行動を自覚する機会になりました。
災害は突然発生します。防災訓練を通じて、避難経路や備蓄品などを見直す機会にしていきましょう。