在学生の99%が知らない?八王子キャンパスの裏側に潜入
こんにちは、工学院大学新聞会です。工学院大学唯一の学生メディアとして大学のキャンパスライフをお届けしています!
敷地面積23万㎡の広大な敷地に、教室や大規模な実験施設、研究設備が立ち並ぶ八王子キャンパス。何年も通っている先生や大学院生でも、19棟ある校舎のすべてを知り尽くす人はいないのでは?
今回は、新聞会メンバー3人が八王子キャンパスを施設課職員の奥村さんとともに巡り、多くの人が知らないキャンパスの裏側について教えていただきました。
1号館を支える縁の下の力持ち?
まず向かったのは1号館。2012年に創立125周年を記念して建てられました。講義室や学生センター、ラウンジ、テラスなどのオープンスペースが集約された八王子キャンパスの中心となる校舎です。
建設時のプロジェクトには、建築学部教授陣を筆頭に建築のスペシャリストが集結。様々な最新設備が導入され、意匠面でも優れた設計になっています。
この1号館の地下に、地震の揺れから建物を守る免震装置があるのをご存じですか?今回私たちは特別に見学させてもらいました。地下へと続く関係者専用階段を下り奥に進んでいくと、その装置がありました。
免震構造は、基礎と建物を切り離して、間にアイソレータ(Isolateは切り離す、の意味)という水平方向に柔らかい装置を入れることで、地震による激しい地面の揺れが建物に直接伝わらないようにする画期的な技術です。薄い鉄板と天然ゴムを何層にも重ねて作られているため、鉛直方向には固く建物の重量はしっかり支え、水平方向には柔らかく変形して地震の揺れを免れる、という2つの役割をこなすことができます。複数の免震装置が1号館の土台部分に設置されており、建物全体を支えています。まさに縁の下の力持ちですね。
この免震装置は最大50cmまで左右に動いて地震の衝撃を吸収するため、作動中は壁にぶつからないように、空間全体が設計されています。
この地下空間は実は空調にも役立っていて、暑い時期には地下水による冷気を利用して講義室へ冷たい空気を流し、反対に冬には地熱による暖かい空気を流しているそうです。
八王子キャンパスの水源は?
皆さんは八王子キャンパスでどれくらい水を使っていますか?トイレをするときや、手を洗うとき、飲み水として使っている人もいるかもしれません。
私たちの学生生活を支える八王子キャンパスの水源は、実は地下からくみ上げた井戸水!地下150mからポンプでくみ上げて、井戸水をろ過し貯水槽に貯めて利用しています。
この地下水は八王子キャンパスの水の約98%をまかない、残り2%は八王子市水道水を使っています。2号館の受水槽から5号館の中や屋上、附属高校の受水槽へ経由して各建物へ供給しています。
ろ過装置の管理などは必要ですが、水そのものを大学で汲み取り製水しているので、キャンパス運営費用の大幅な節約につながっています。
地下水の冷気を空調として利用したり、災害で市の水道が止まっても使用することができたりと、なにかと便利な八王子キャンパスの井戸水。一石二鳥どころではない一石多鳥な工学院大学の井戸水について学んだあと、私たちは次の場所に向かいました。
お水のお掃除屋?
八王子キャンパスでは、化学系の学科を中心にさまざまな薬品を使った実験が行われています。
実験を安全に行うことはもちろん重要ですが、その際に発生した実験廃水も環境に負荷をかけず安全に処理しなくてはいけません。実はその浄水処理まで、キャンパス内の施設で行われています。
17号館裏にある環境保全センターでは、実験廃水から不純物を取り出し、きれいになった水を下水に流しています。
まず目に留まったのは、いくつも並んだ大きなタンク。まず実験室からこの施設に廃水が集まり、有機物と無機物で分別されます。有機物が含まれる廃水は、有機物用のタンクに流れ込み、中にいる微生物が分解することによって下水に流せる水になるそうです。微生物の意外な活用方法に驚きました!
無機物の場合は、特殊な薬液によって廃水内の無機物を凝集させ、その塊が沈殿する仕組みになっています。実際にタンクから取り出した水を見せていただいたのですが、不純物が底に沈殿していて、上澄み水はきれいな無色透明でした。
残った沈殿物は脱水することで汚泥となり最終的には産業廃棄物として処分されます。
きれいになった水は、さらに自動ろ過塔、活性炭槽、キレート樹脂槽、ゼオライト槽の4種類のタンクでさらにろ過します。活性炭槽では有機物を、キレート樹脂槽では水銀を、ゼオライト層では窒素関係を吸着させているそうです。こうして実験廃水は、安全できれいな水となり、下水へと流されます。
実際に施設を見学し処理過程を知ることで、工学院大学が工科系大学として実験に力を入れていることを強く感じることができました。
電柱はどこへ?
普段八王子キャンパスを歩いているとき、皆さんは電柱を見たことはありますか?言われてみれば、見たことがないという人がほとんどだと思います(私もそうでした)。
八王子キャンパスの電気はどのように送られているのでしょうか。
広場の真ん中にあり、地下へとつながっていそうなこの入口。学生の間では単位を取るための労働施設などさまざまな憶測が広がっていますが、実はその中には共同溝と呼ばれる設備がありました。
地下通路のような空間は、5号館近くまで約300m伸びているとのこと。通路内に何本も通っている管は、電線や水道管です。この場所を伝って、電気や水が八王子キャンパスのあらゆる施設へと流れています。
共同溝の設備は、京都など文化財が多い町で景観保護のためにも利用されているとか。生活インフラがまとまっているので、管理も効率的だそうです。工学院大学の血管ともいえる場所に感心しつつ、私たちは次の場所に向かいました。
釘を使わない木造倉庫?
野球場の横にある倉庫は、伝統的な工法が用いられた木造建築で、K×Kプロジェクト)という学生団体が設計しました。同様の倉庫が八王子キャンパス内に3棟、附属中学校・高等学校内に1棟あります。
同プロジェクトは、WA-K.proという建築系の学生プロジェクトから派生した学生団体。「地元・多摩産材を用いた地産地消のものづくり」をテーマに、多摩産の木材を使用し八王子キャンパス内に点在する老朽化した倉庫を学生たちが設計し、木造建築で建て替えることを目標に活動しています。
日本の伝統的な「木組み技術」を使ったこれらの倉庫には、なんと釘が一切使われていません。これは宮大工さんなどが使う技法で、神社仏閣の建設方法と同じです。普段の授業では扱うことが少ない伝統的な木造建築を、地元企業と連携して実体験を通して学んでます。
材料となる木材の加工も、連携企業の工場で学生自身が加工の現場を見学・体験しているそう。よく見ると、倉庫の柱に「いろはにほへと」と漢数字が書かれています。これは、どの部材をどこに使うかを書いた目印で、これも宮大工さんの伝統ある技法だそう。通常は仕上げの段階で外から見えないようにしますが、技法を学び伝えるために、あえてそのままにしています。
建築学部の学生のみなさんは、ぜひ見学してみてはいかが?
山奥にある謎のお社?
野球グラウンドよりさらに奥に進んでいき、周りは東京とは思えないほどの山の中に。私たちが見にきたのは小さな社です。この社は金毘羅社といい、大物主神(おおものぬしのかみ)という日本神話の神を祀る「宮」だそうです。神様にご挨拶をした後、施設課の奥村さんから由来を聞きました。
この金毘羅社はもともと5号館が建っている土地ににあった小さな祠で、造成工事の際に移設されました。八王子キャンパスの安全と発展を願い、昭和60年12月24日に今の金毘羅社が再建されました。大学ではこの日を祭礼日とし、毎年、関係者がお参りしています。
金毘羅社を去る時、私はこっそり今後の学業成就をお祈りしました。
取材を通して、多くの方の支えで授業や課外活動に快適に取り組める環境が作られていることがよくわかりました。キャンパス巡りで解説をしてくださった施設課の奥村さん、丁寧な説明をしてくださりありがとうございました。
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