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多摩産木材で学生が作った木造倉庫が完成!K×Kプロジェクトの取り組み

建築をテーマに活動している学生プロジェクト「WA-K.pro」は、木造建築に特化したチーム「K×Kプロジェクト」を設け、八王子キャンパス内に点在する老朽化した倉庫を学生たちが設計し、10年かけて多摩産の木材を使用した木造建築に建て替えることを目標に活動しています。

K×Kプロジェクトはこれまでに、2017年に「硬式野球部倉庫」、2018年に「体育授業用具倉庫」、2019年に「附属中学校・高等学校体育用具倉庫」、2022年に「テニスコート用レストハウス」を完成させました。

2017年竣工1棟目「硬式野球部倉庫」

今回のnoteでは、K×Kプロジェクトの学生20人が2023年11月から春休みにかけて完成させた5棟目の倉庫について紹介します。

2024年春に竣工した5棟目の倉庫

地元木材で築く新しい倉庫

用具倉庫の設置場所は建築重機が入れない狭い場所にあったため、学生たちはまず建設予定地の根切りを手作業で進めました。
木材は地元多摩産のものを活用し、地産地消のものづくりを実現。また、林業振興と木材流通を学ぶ観点から、一部の木材は角材や板状ではなく、丸太の皮を剥いだ状態で納品され、その良さが活きるように設計しました。

建設予定地の根切りを手作業で行う学生たち

敷地を掘って建物の基礎造りから始め、丸太を削って柱を立てたり、屋根をふいたりと、春休みは毎日のように現場で汗を流し、苦戦しながら約4ヶ月かけて完成させました。

林業・製材所の見学から学ぶ社会的課題

施工途中の3月上旬、木材購入の購入協定を結んでいる東京都檜原村の林業会社・株式会社東京チェンソーズの人工林および、村内の製材所を見学しました。

檜原村にある人工林で、株式会社東京チェンソーズの吉田尚樹さんから、林業における人手不足や国産木材の現状など、社会的課題について説明を受けました。林業は他の産業に比べて、木が太くなるまでに枝打ちなどの手入れが必要で、建築材として取引されるまでに50年以上もの長い時間がかかります。価格の安い海外産木材の流通により、国産材がコストに見合った価格をつけられなくなっている現状を聞き、学生からは「木材の価格が安すぎてショックだった」という声が上がりました。

樹木として育つ杉やヒノキの姿を初めて見たという学生も

製材所では、木の皮を剥がしたり、巨大な機械で木を縦に切ったりと、山から運ばれてきた丸太を板材や角材に加工する様子を見学しました。切った際に飛び散るおが屑は、家畜の敷床などに活用されています。
木がどのようにして建材になるのかを学び、木材を無駄にしない精神や、国産材の現状を知った学生たちは、真剣な表情を見せていました。

丸太の皮むきなどの製材課程を間近で見学しました。

木造の倉庫を建てるだけでなく、こうした林業の現状や課題を学ぶことも、このプロジェクトの大事な取り組みの一つです。

5棟目の用具倉庫の完成

完成した5棟目の倉庫は、広さ48.09平方メートルの木造平屋です。
今回のプロジェクトでは、本学の卒業生である繁田尊友さんが主宰する株式会社繁田尊友建築設計事務所が指導にあたりました。繁田さん監修のもと、1年生と2年生の学生たちは、流線型で船形のデザインを採用した用具倉庫を設計しました。

建物の奥に位置する弓道場を考慮し、流線型デザインが取り入れられました。曲線に沿って並ぶ列柱状の通路は、弓道場へのアプローチを意識したものです。また、木を余すことなく使うという株式会社東京チェンソーズの方針に共鳴し、市場にはなかなか出回らない曲がった木材なども工夫を凝らして使用しました。

弓道場へのアプローチを意識した通路
中から見上げた天井。
萱部分のメンテナンスは代々のメンバーが受け継ぎます。
特徴ある流線形と天井

八王子キャンパスで竣工式を開催

4月8日に八王子キャンパスにて完成した倉庫の竣工式が行われました。
後藤治理事長がプロジェクトの経緯を紹介し、株式会社東京チェンソーズ代表取締役である青木亮輔さんが林業の現状について触れながら、「これからの社会を担う学生に木の良さを知ってもらえたら嬉しい」と挨拶しました。同日、多摩地域や木材を扱うメディアが多数参加し、学生たちのこの活動が広く報じられました。

K×Kプロジェクトのみなさん

実際に制作した学生の感想

柱が水平に立たない、穴が垂直に開かないなど様々な問題が発生しましたが、その都度メンバーで対応策を話し合いました。構造と作業の安全性は繁田先生にアドバイスいただきながら進めたことで、課題を解決していく能力を身につける良い経験になりました。将来は1級建築士として、この貴重な経験を活かしていきたいと思います。
WA-K.pro学生代表 建築デザイン学科3年 森田遥大さん

k×k-projectでは、実際に建物を施工するという経験を通して建築の難しさや面白さを学ぶ事ができました。初めは、工具もまともに扱った事がなく、とても建物を建てる技術があるとは言えない状態でした。そんな中でも、アイデアを出し合い自分たちなりの工夫をする事で問題を解決していきました。建物を建てるために、アイデアを出し合う経験は授業では出来ない貴重な経験だったと思います。春休みを丸々費やした施工期間で学べた事は、何事もにも変え難い貴重な体験になりました。
建築学部総合2年 清水 陸翔さん

学校の授業では設計の課題はやることはあっても、実際に施工するということはほぼないので貴重な経験となりました。実際に施工してみるまではどんな建物を建てるかを主に考えて課題に取り組んでいましたが、K×Kprojectでの施工を通して、どのように建物を建てていくかという構法的な視点にも興味が湧きました。
建築学部総合2年 小磯 優人さん 

左からWA-K.pro 清水さん、WA-K.pro森田さん、繁田尊友さん

株式会社繁田尊友建築設計事務所
繁田尊友さん コメント
今年度のKxKプロジェクトは設計から施工までを一貫して体験する企画となりました。
建築の醍醐味の一つに完成した時の『達成感』が挙げられますが、1・2年生の若い時にこれが経験できたのは有意義だったと思います。建築の分野は専門的かつ多岐に分かれていますので、参加者は本プロジェクトを通じ、興味ある分野を再確認できたのではないかと期待しています。今後はそれぞれ専門分野に進むと思いますが、一緒に活動した仲間を大切に切磋琢磨を続けてください。そしていつか、次の世代の人たちにも建築の面白さを伝えたり、その技術を活かして社会や人と関わってくれると嬉しいです。

K×Kプロジェクトは今後も地元多摩産の木材を継続的に活用し、地産地消のものづくりを推進しながら、近隣企業との長期的な産学連携を図っていきます。早速来年に向けて新たな倉庫の設計準備を始めています。今後の同プロジェクトの活動にご期待ください!