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職場でも欠かせない「大学で得た化学の基礎」 #卒業生インタビュー

北興化学工業株式会社は、殺菌剤や除草剤のほか、各種材料・原料の製造販売を事業内容とする企業です。同社創製研究部の研究職として活躍する砂川晶さんに、現在の職業を選んだ理由やこれまでのキャリア、大学時代の思い出などについて伺いました。

北興化学工業株式会社 創製研究部 研究職
砂川 晶さん

入社8年目/化学応用学専攻修了 有機合成化学研究室(指導教員:南雲 紳史教授)/趣味:ソファで昼寝、草野球、娘と公園で遊ぶ
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1.現在までのキャリアについて教えてください。

 入社以来7年間、創製研究部に所属しています。2016年4月の入社時から2022年11月までは探索研究業務を担当し、その間2022年3月から半年間、育休を取得。2022年12月からは現在の農薬原体の製造支援業務を担当しています。「原体」というのは、農薬の有効成分となる化合物のことです。

Q2.現在のお仕事内容について教えてください。

 自社の原体を安定的に製造できるようにするための仕事を行っています。社内および他社との打合せの対応、製造後の品質を確認するための分析、分析に使用する標準品サンプルの調整および提供などが主な業務内容です。また、製造コストの削減に向けた合成法の改良や検討を進めるのも私の担当です。

Q3.現在の勤め先や職種を選んだ理由をお聞かせください。

 大学時代は有機合成化学研究室に所属していたこともあり、合成系の研究職を志望していました。北興化学工業株式会社を選んだ理由は、同社で働いている研究室の先輩の存在が大きかったですね。就活時から後輩である私のことを気に掛けてくれたので、先輩は心強い存在でした。また、最初に内定をいただいた会社という点も重視しました。

実をいうと、大学入学当初は将来研究職に就くなんて考えてもいませんでした。学部時代に先生が授業中、「君たちは大学院に進学するんだよ」と熱心に勧めていらしたのですが、あまり真剣には受け止めていなかったですね。それが変わったのは研究室に配属されてから。実験をすごく楽しく感じるようになったのです。大学4年間では足りない、納得できるまで研究に取り組んでみようと、大学院への進学を決めました。

Q4.仕事の魅力とやりがいについて教えてください。

 一番やりがいを感じるのは、「原体を納期通り、必要量製造できた」との連絡をもらった瞬間です。また、製造時に発生したトラブルについて、さまざまな検討の結果によって解決へと導いた際には周囲から非常に感謝されます。この点も魅力に感じます。

Q5.学生生活を通して、力を入れたことや印象に残っていることはありますか?

 ティーチングアシスタント(学部生に対して教育補助を行う大学院生)として担当していた「有機化学演習」の授業で、反応機構を基礎から学び直せた経験が今も非常に役立っていると感じます。合成反応では想定外の化合物ができることが珍しくありません。想定外である化合物の構造を推定する際には、反応機構から生成し得る構造パターンをすべて書き出し、実際の分析データと照らし合わせます。反応機構がわからないと、最初の構造パターンがまったく思いつかないので欠かせない基礎力だと思います。

Q6.学生時代に受講し、印象に残っている授業はありますか?

 基礎科目のすべてです。新しいことを理解するためには、基礎が土台となるため、「特に」必修科目はしっかりと前方の席で講義に臨んだ方が良いと思います。私自身、もっとそうすれば良かったという多少の後悔を込めて……。今にして思えば、工学院大学は基礎の基礎ともいう部分を、徹底的に教えてくれた場でした。授業でわからないことがあっても、研究室を訪問して先生に質問をすると熱心に教えてくれました。先生が不在の時でも、担当科目のTAをしている大学院生の先輩が親切に教えてくれたこともあります。

Q7.就職活動において、意識したことや苦労したことはありますか?

 面接では、「ありのままの自分」で受け答えをすることを意識していました。就職キャリア支援センターのスタッフには、履歴書の添削や面接の練習で大変お世話になりました。

Q8.工学院大学で印象に残っていることはありますか?

 後に妻となる女性と出会えたことが、工学院大学時代での大きな出来事だったと思います。妻は私と同じ有機合成化学研究室の一学年後輩でした。先輩と後輩として一緒に研究に打ち込んだからこそ、良い関係を築くことができたのだと思います。仮に大学以外、他のコミュニティで出会っていたとしても、おそらく交際へと発展することはなかったのではないか? 想像ですが、そんな気がします。

Q9.今後の夢や展望をお聞かせください。

 今後は、合成化学(+分析化学)を軸に別の専門性を身につけたいと考えています。興味がある方向性としては、研究内容を理解できる人事部員(社労士やキャリアコンサルタント、心理カウンセリングなどを勉強)です。そのほかには、化合物の代謝や安全性についての勉強をして農薬登録担当者、英語力を向上させて海外企業相手の営業担当や資材調達担当などの可能性も考えられます。英語力に関しては現職においても業務の効率化に直結するスキルであり、どの職種においても有用であるため、勉強の必要を感じています。また、自分の興味やスキルのほかにも、会社に希望するポストの空きがあるかも考慮する必要があるなど、今後のキャリアプランというのは最近すごく考えているテーマです。

Q10.後輩へのメッセージをお願いします。

 たった一人でも構いません。心から大切だと思える友達を作ってください。私は大学入学後、他大学のバスケットボール部に所属して、スポーツを楽しみました。その時にできた友達とは、仕事のことや子育てのことなど、今でも話し合える良い関係です。

バスケットボール部の仲間たちと

在学時を振り返って……先進工学部 南雲 紳史教授から一言💡
砂川さんは海洋に棲息する微生物が作り出す薬理活性物質の化学合成に挑んでいました。この合成は超難関で、一つの問題を解決しても、すぐに新たな課題が発生するという繰り返しでした。こうした全合成研究において、体力と知恵を駆使して幾つものハードルを乗り越えることができました。いつも優しい笑顔で周りを照らしていたのが印象的でした。広く柔軟にキャリアプランを考えているようで、とても頼もしく感じます。これからもご家族を大事にし、自身の健康に留意して信じる道を突き進んでください。

工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。

次回の卒業生インタビューもお楽しみに!


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