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安全・高性能な医療用デバイスを素材から開発し、医療を支える

セントラル硝子株式会社で、医療用デバイスの開発に携わる大竹薫さん。「化学が好き。研究が好き」という気持ちが仕事のモチベーションになっているという大竹さんですが、高校時代は化学が特に好きだったわけではなかったそうです。現在の業務内容や職業・会社を選んだ理由、大学時代のことなどについて伺いました。

セントラル硝子株式会社 New-STEP研究所
大竹薫さん

入社4年目/先進工学部 生命化学科卒業・化学応用学専攻修了(有機合成化学研究室)/趣味:ブラジリアン柔術、映画鑑賞
                  ※掲載内容は取材当時のものです。

Q1.現在のお仕事について教えてください。

 移植手術などで用いる医療用デバイスの開発に携わっています。高い安全性や性能が求められるなか、天然・人工高分子を掛け合わせた新素材の開発・作製から、素材の加工技術の開発、動物実験等での物性評価まで全てワンチームで担い、製品化が可能な水準までブラッシュアップしていくことを目指しています。大学との共同研究のため、大学の研究者や現場の医師との意見交換など、社内外の人とコミュニケーションをとる機会が多いのもプロジェクトの特徴です。

Q2.今の勤務先を選んだ理由やきっかけをお聞かせください。

 大学院では有機合成の研究室に所属していたので、有機合成を活かした素材の開発ができる企業や職種に絞って就職活動をしていました。セントラル硝子との出会いは、研究室の先輩がリクルーターとして訪問されたことがきっかけです。先輩の話を聞いて興味を持ち、インターンシップに参加しました。大学の研究室のようなおおらかさがありつつもしっかりと結果は出す、という研究への姿勢や社風が自分に合っていると感じ、入社を決めました。

Q3.仕事の魅力ややりがいを教えてください。

 現在のプロジェクトでは、素材の作製から加工、評価と、製品がかたちになるまでの全工程に携わることができる点におもしろさとやりがいを感じています。最終工程まで経験することで、原料の選定や実験など、一つひとつの工程の意味や工程同士の関係性が見えてきて、より俯瞰して理解することができるようになりました。また、素材や材料を扱う今の仕事は、覚えるべき知識や扱う分析機器などが多いのですが、自分にとってチャレンジングな分、仕事を通して成長を実感でき、それもやりがいにつながっています。

Q4.仕事における困難をどのように乗り越えてきましたか?

 日々複数のタスクを抱えており、それぞれに納期があるので、業務の自己管理能力が求められます。入社1〜2年目は自己管理がなかなかできずに業務が滞留してしまうこともあったのですが、社内研修を機に、納期から逆算してスケジューリングをするようになりました。具体的には、月単位、週単位、日単位のto do(やるべきこと)を明確にした上で、翌週や翌日のスケジュールを立てておき、オフはしっかり休む……ということを実践しています。今ではこの流れを習慣化でき、忙しい時期でも仕事が溜まることがなくなりました。

Q5.現在の職種には、どのような知識、能力、心構えが必要だと感じていますか?

 知識については、大学院で修得できる基礎知識があれば十分だと思います。実際、大学でやっていた研究をそのまま継続するのはレアケース。私の場合も、学生時代は有機合成化学について研究していましたが、入社後は打って変わって素材の加工や評価に携わるようになりました。どんな仕事にも言えることかもしれませんが、何よりも大事なのが、化学や研究が好きだという気持ち。特に研究開発の仕事は失敗の連続なので、「それでも好き」という気持ちがないと続きません。「好きだからやる」というのはこの上なくシンプルな動機ですが、自分の付加価値になるとも感じているので、これからも大切にしたいです。

Q6.大学で学んだことや学生時代の経験で、今、活きていると感じることはありますか?

 一つは、大学院時代に培った、研究でトライ&エラーを繰り返す根気強さと体力です。うまくいかなかったときにその壁をいかに突破したかという経験が、活きていると感じます。もう一つは、学科連合委員会の活動を通して身につけたコミュニケーション能力です。委員長を務めていたので、年上の人を含めていろんな人と関わる機会が多く、チームの雰囲気作りなどにも気を配っていました。会社という組織においてチームで研究を行うためには、円滑なコミュニケーションや情報共有が不可欠です。意図して学生時代に経験を積んだわけではありませんが、結果として大いに役立っています。

Q.7就職活動を振り返り、後輩にアドバイスをお願いします。

 就職活動では、視野を広げたり自分を客観的に見たりするために、意識的に周囲の人の手を借りていました。エントリーシートは就職キャリア支援センターの職員の方に、研究概要書は研究室の教授に添削してもらい、面接の練習は友人や家族に相手になってもらいました。特に、会社役員を務める父に相談して、どういう人材が欲しいか、どういった目線で見ているかなどを聞けたのは大きかったです。自分では気づかないことや新しい視点が得られるので、後輩の皆さんにもおすすめしたいです。

Q.8工学院大学で学んでよかったと思うことはありますか?

 研究や課外活動、就職活動に対して、大学側から手厚いサポートがあったことです。今でこそ化学や研究が大好きな私ですが、高校時代は特に化学が好きだったわけではなく、受験で必要だから勉強していた…という感じでした。それが、大学・大学院の6年間で研究のおもしろさに目覚め、自分でも驚くほど成長することができました。学科連合委員会の活動も、「どうしたらできるか」を一緒に考えてくださる職員の方々のおかげで、充実したものになりました。また、生命化学系の大学院生を対象にした就職支援プログラムも、就職活動について何の知識もなかった私にとっては大いに助けになりました。友人らとの出会いもまさに一生モノで、工学院大学で過ごした6年間は私にとって大きな財産となっています。

学科連合委員会のメンバーと

Q.9今後の夢や展望をお聞かせください。

 若いうちは、研究職に限らず、さまざまな領域や職種に挑戦して経験を積みたいと考えています。入社後は、学生時代に研究していた有機合成化学とは大きく異なる素材の加工、評価に携わるようになりました。最初は戸惑うこともありましたが、知識や技術を修得していくたびに自分の成長を感じるようになり、積極的に新しい分野に挑戦することが大事だと考えるようになりました。最終的には最先端の研究に携わる研究者になり、人々の暮らしや豊かな社会を支える製品の開発を手がけるのが目標です。

在学時を振り返って……先進工学部 南雲 紳史教授から一言💡
大竹さんは生命化学科の一期生です。元気で個性派ぞろいの学年でしたが、仲間に恵まれ良いキャンパス生活を過ごしていたようです。印象的な笑顔と独特の愛嬌の奥に、若々しい意欲と知性を垣間見られる学生でした。有機合成化学研究室では、ヘリセンという螺旋構造をしたユニークな分子の合成法について研究していました。螺旋化合物といえば、遺伝子の本体であるDNAが有名ですが、薬理活性や触媒機能を賦与する構造として、ヘリセンに関心が集まっています。手探りの状態で始めた研究でしたが、全く臆することなくこのテーマに向き合い、ついにはその合成に成功しました。研究室では、後輩たちから良き兄貴として慕われていました。一学年下の学生を誘って筋トレによく通っていたようで、研究室でも筋肉談義で盛り上がっていた ようです。大学での学びや現在の研究に対する前向きなコメントから、研究者としてひとまわり大きくなったように感じます。 これからも、自然の声に耳を澄まし、仕事の苦労を喜びの一つとしてとらえ、充実した研究者人生をおくってください。

工学院大学は、136年の歴史の中で10万人以上の卒業生を輩出し、その多くがものづくり分野をはじめ、さまざまな業界で活躍しています。
先輩たちが歩んできた道を、将来を考える上での材料にしてみてくださいね。
次回の卒業生インタビューもお楽しみに!

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