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鉄道開業150周年の今、考えるべきこと 〜高木 亮教授(工学部)✕大内田 史郎教授 (建築学部)対談〜 前編

工学院大学

新橋〜横浜間に日本初の鉄道が開業したのは、1872年(明治5年)10月14日のこと。それから150年、鉄道は日本の社会に欠かせない輸送手段として、多くの人々の暮らしを支えてきました。今回は鉄道開業150周年を記念して、数多くの交通システム研究を手掛けてきた工学部電気電子工学科の高木亮教授と、国内外の駅舎建築を研究テーマとする建築学部建築デザイン学科の大内田史郎教授の対談をお届けします。時代とともに変化してきた鉄道の現在地と未来について、鉄分の多い対話をレポートします。

大内田史郎教授と高木亮教授

社会が大きく変わる今、鉄道にも変革が求められている。

―今回は鉄道開業150年を記念しての対談です。まずは、鉄道と深い関わりを持つ研究を行ってきたおふたりが、150周年という節目をどう捉えているか教えてください。

高木:鉄道は今、大きな変革のチャンスを迎えていると考えています。150年前の開業以来、鉄道は日本の交通システムを支える存在として大きな力を持ってきました。そしてその力は、都市部を中心に今後も維持されると考えています。一方で、この150年の社会構造の変化に、鉄道が対応できていない部分が多いことも事実。たとえば高度経済成長期には、輸送の“量”が優先され、乗客の快適性や利便性といった“質”の部分がおざなりにされてきました。そのような歪みが少しずつ重なってきたところに、コロナ禍による利用者の減少や生活スタイルの変化が訪れ、パラダイムシフトが起きる土壌が生まれている。大都市部の鉄道にとっては、これは今を逃すと次はないくらいの大きなチャンスです。そのようなタイミングで、大内田先生が『東京の名駅舎』を執筆されたことに興味深いと感じています。

大内田:旧新橋停車場や東京駅などの歴史ある建築から、高輪ゲートウェイ駅や銀座線渋谷駅などのスタイリッシュな現代建築まで、『東京の名駅舎』では新旧の駅舎を網羅し、これまで見過ごされがちだった建築としての駅舎の面白さを紹介しています。鉄道開業150周年という節目に本書を発行した背景には、200周年や300周年を迎えたときに「150周年の駅舎はこうだった」ということがわかるようにしたいという思いもありました。

辰野金吾が設計した東京駅丸の内駅舎

―『東京の名駅舎』を読むと、関東近郊だけでも実にさまざまな駅舎があることがわかります。沿線によって個性が異なる点も面白いですね。

大内田:そうですね。私鉄に着目してみると、東急沿線では都市開発と併せて斬新な駅舎が作られる傾向が強い。一方、東武鉄道沿線はクラシックな趣きの駅舎が多く残されています。JRの場合では、交通の大動脈である東海道本線では駅ビル化が増えている一方で、中央本線では“街の顔”となるような駅舎が多く残されていて、やはり路線によって特色があります。本書では扱っていないのですが、常磐線などの橋上駅※は、そろそろ再検討すべき時期に来ているという印象もあります。この点は、高木先生の「変革期」というお話とも通ずる部分ですね。
※線路とプラットホームをまたぐ跨線橋の上に駅舎を設けた形式の駅

高木:橋上駅は面白くないですね(笑)。

大内田:もちろん橋上駅には一定の利便性がありますし、自治体との協定や費用負担の課題などがあり、容易に変更できないことはわかります。しかし、駅舎にアクセスするために階段を登る必要のある橋上駅は、使い勝手の面やデザイン的に“街に開かれていない”印象があるのかもしれません。

高木:総武線や常磐線では、国鉄時代に行われた長い複々線化の影響で、古い駅舎があらかた壊されていますよね。その後、画一的な橋上駅が多く作られて印象があります。これはやはり高度経済成長期の「量をこなす」側面が強い。

大内田:駅舎は利用者のピーク時を想定して計画されるので、通勤や通学の時間帯のキャパシティに合わせて設計される。なので、特に地方都市では昼間に行くと閑散としていて、街の規模にあっていない大きさの駅舎もあるように感じます。人口動態や生活スタイルに合わせて、もっと使いやすく、“街の顔”になるような駅舎が、これから生まれていくことを期待しています。

駅舎のレガシーを未来につなぐ

―高度経済成長期に画一的なデザインの駅舎が量産された一方で、日本には街のシンボルとなるような歴史ある駅舎もたくさんありますね。

高木:そうですね。たとえば東京駅の復原はやはり見事だったと思います。

大内田:我々が反省すべき点かもしれないのですが、1914年にできた東京駅を超える魅力的な駅はなかなかありませんね(笑)。今、個人的には国鉄時代の1950〜60年代に造られた駅に注目していますが、たとえば東北本線の白石駅は、優れた例のひとつですね。戦前に造られた駅のなかでは、伊藤滋が設計した御茶ノ水駅にも注目しています。現在改良工事が行われていますが、都市部では御茶ノ水駅のような掘割駅※2に、良い駅が多いと感じています。
※2地面を掘り下げた掘割内に、天井のない線路やプラットホームがある駅。

東北本線白石駅

高木:私の師匠(曽根 悟 先生)も「掘割駅が良い」と昔から言っていました。たしかに掘割になっているとワンレベルダウンでプラットホームに行けるので使いやすい。

大内田:私はオーストリア・ウィーンの市電が好きなのですが、オットー・ワーグナーが設計した駅舎も掘割駅が多いです。プラットホームに自然光を取り入れることができるので開放的ですし、駅舎としても素直なデザインだと思います。

工学院大学から見た新宿駅

―工学院大学の学生にとって身近な存在の新宿駅も、今年からリニューアルされる予定ですね。

大内田:西口広場や小田急百貨店本館を含む新宿駅西口一帯は、ル・コルビュジェに師事した坂倉準三による設計です。東京を代表するモダニズム建築のひとつなのですが、細部を見ていくと、デパートなのに光を取り入れる窓を多用していたり、いろんなフロアレベルからアクセスできるようになっていたり……。建築的な面白さがあります。

高木:地上から見ると小田急百貨店が屏風のように広がっていて、JRの存在はあまり感じられない。JRの正面玄関は南口でしょうか? 「新宿駅はどんな建物か」と問われると、おそらく人によって思い浮かべる駅舎は異なる。その意味でも、新宿駅は面白い駅ですよね。今後どのように再開発されていくのか注目したいと思います。

大内田:そうですね。既存の駅舎を残して活用するための保存・再生デザインが、今後ますます重要になっていくと思います。

前編では大内田教授の著書「東京の名駅舎」から、駅や鉄道の歴史についての話を中心にお届けしました。
後編では、鉄道の未来や交通システムの課題について、発信します。
お楽しみに!

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