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21世紀工手 明日へ 芳澤一夫画伯に、芸術観を訊く

 小田原を拠点に創作活動を続ける日本画家 芳澤一夫氏に、本学の目指す人材育成像となる、現代的なエンジニアリング・リーダー「21世紀工手」を題材にした作品を制作していただきました。抽象画という手法で、モノづくりの姿勢と視点を見る者に問いかける作品となっています。学生はもちろん本学に関わる皆様に何かを感じ取ってもらいたいと、芳澤画伯は語ります。
この作品への想い、芸術観など、工学院大学の玉川雅之常務理事がお話を伺いました。

工学院大学 玉川常務理事(左)  日本画家 芳澤一夫氏(右)

(玉川常務理事) まずは、工学院大学の人材育成像「21世紀工手」をこのような素晴らしい作品で表していただいたこと、心から感謝いたします。
芳澤先生は、小田原市に拠点を置き、これまで、小田原駅ステンドグラスや小田原城 三の丸ホールの緞帳原画など、芸術的な側面で地域活性化を支援してきました。ものづくりや芸術をとりまくお考えを伺えればと思います。
 
(芳澤画伯) いまの時代は、芸術に関しては、本物に触れる機会が減ってきているのではないか?と感じています。作者や銘柄に関わらず、以前はもっと生活に近いところに芸術はあったのではないでしょうか。子供が好きなものを描く動機などは正にそうで、興味があるもの、面白いものを素直に描く。こういった姿勢やものの見方は本来誰もが持っていて、大人になって段々と失われていく事なのかもしれません。見る側、受け手側も芸術とは、のような肩肘張らずに、美しいとか、面白いという感性を、もっと素直に感じとってもらいたいと思います。
 あと、ミケランジェロやダビンチは、芸術や音楽への造詣も深く、工学にも通じていた。機能美という言葉もある。工学と芸術は切っても切れない関係ということをあらためて認識させられます。
 
(玉川)芳澤先生は、世界中で創作活動をなさっておりますが、グローバルからみた日本の状況をどうお考えでしょうか。
 
(芳澤) バブル経済を経て、いつの頃からか、経済性や合理性といった価値観が重視され、芸術を取り巻く環境も、そういった部分に寄ってきた印象を持っています。これは少し残念に思っております。例えば、かつてのクルマのデザインなどは「日本刀」の美に通じる、意匠、造形、想いの様な何かがありました。アジアの国々には日本人がかつて持っていた芸術に対する素直な姿勢がまだみられるかもしれません。
私は少し気掛かりなことがあります。日本人は「日本は科学技術では世界トップレベル」と素朴に思っている人が多いことです。アジア諸国等の躍進も目覚ましい。そのことを意識した上で、様々な工夫を行なっていかないと、真の一流として輝き続けられなくなってしまうのではないかと少し心配しています。
(玉川) 今回、描いていただいた「21世紀工手 明日へ」の想いをお聞かせください。

21世紀工手 明日へ

(芳澤) 工学院大学の積み重ねてきた、ものづくりに懸ける姿勢には大変共感するところがあります。お話をうかがうと、「工学院大学なかなかやるじゃないか」というのが率直な感想です。ものづくりには、アートな思考や感性は欠かせません。 ぜひ、皆様に作品をご覧いただき、自身の可能性や、モノの見方を広げてもらえればと思います。例えば、(頭の中や写真で)作品の一部分を抜き出して、拡大や再構成、近づいたり、離れたりしてみるなど、面白い発見があるかもしれません。
今回新作の「21世紀工手 明日へ」の他、「工の精神 春・夏・秋・冬」の4作品には、四季とリンクさせた、一本の線、二本の交差する線、宇宙や地球を想起する球体を描きました。日本の四季のうつろいは、世界中みてもなかなかない日本の特徴です。ぜひ限られた学生生活のなかで感じ取って欲しい感性の一つです。
 日本の発展を支えてきた、ものづくりに関わる人材を数多く輩出してきた大学で学ぶことに、皆様は、もっと自信と誇りを持っていただいてよろしいかと思っています。そのような若者へのエールとして受け取ってもらえればと思います。

四部作「工の精神   春・夏・秋・冬」

(玉川)本学では工学院大スタディーズという科目があり、建学の精神や歴史、社会から期待される使命などを紐解く授業があります。自分達が学ぶ大学の生い立ちや、辿ってきた歴史から、学びの意義を振り返ることで、新しい気付きがあるかもしれません。学内にある、様々な文献や作品も、芳澤先生のアドバイスで見てみると、また新たな視点が生まれるかもしれません。
芳澤先生、本当にありがとうございました。

芳澤一夫氏
日本画家 1954年 神奈川県生まれ 小田原市在住
高等学校国語Ⅰ・Ⅱ教科書表紙(東京書籍)、さだまさし20周年アルバム ジャケット、小田原駅ステンドグラス、小田原城三の丸ホール緞帳原画など、日本画を軸に幻想的な抽象画を描く。箱根成川美術館、GinzaSixでの個展、LEXUSとのコラボレーションなど、精力的な活動を続ける。
本学の人材育成像「21世紀工手」を題材にした「明日へ」ほか4作品を新宿キャンパス13階に貸与展示中。


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