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中目黒が舞台 建築学部で「お店屋さんごっこ」

建築デザイン学科 塩見研究室では、毎年、学部4年生の学生たちが「お店屋さんごっこ インテリアデザインのお勉強」と題した展示企画を開催しています。
6年目を迎える今年のコンセプトは、「ここで見つける新たな『スキ』」。研究室の学生さん2名に、企画の趣旨や作品の見どころを聞きました。

左:植松 弓琴さん(建築デザイン学科4年 塩見研究室)
右:中村 里菜さん(建築デザイン学科4年 塩見研究室)

ー「お店屋さんごっこ」はどんな企画ですか?

植松さん:
塩見研究室の学生たち一人一人がお店をプロデュースし、建築模型として形にしました。決められているのはこの計画の場所と躯体条件だけで、その他はすべて自分たちで考え、お店を作り上げます。
建物の設計やインテリアデザインなど建築分野のみではなく、商品からサービス内容、お店のロゴやコンセプトまで、その店に関わるすべてのことを学生がプロデュースするのが、この企画の特徴です。学部3年生の夏休みからプロジェクトが始動し、約10カ月かけて形にしました。

ー 今年のお店の舞台に選ばれた場所はどこですか?

中村さん:
今年の舞台は、中目黒の東京音楽大学代官山キャンパスの前です。地域の特色によって客層が変わるため、現地にフィールドワークにも行きました。中目黒駅から徒歩約5分のこの場所は、音大の学生をはじめ、感度が高い若者が集まる場所です。

お店屋さんごっこの舞台となった場所。この場所には実際に店舗が建っている。

―植松さんがプロデュースしたお店について教えてください。

植松さん:
私がプロデュースしたお店は「あんこ日和」と名付けました。その名の通り、あんこを使った和菓子やあずきなどを売るお店です。
わたしはあんこが大好きなのですが、あんこを食べるときに、ほとんどの人は材料となる豆にまで意識を向けないですよね。だから、おいしくて体にもいいあんこの良さをもっと知ってほしいという思いで、このお店を作りました。
あずきなどの豆を買うこともできますし、2階ではワークショップであんこやアレンジレシピを作る体験もできます。

植松さんがプロデュースしたあんこ屋さん「あんこ日和」
店舗のロゴデザインも学生自身が制作。
植松さんはあんこや豆の形から着想を得て、このロゴを考案した。

―「あんこ日和」の見どころを教えてください。

植松さん:
あんこの良さを伝えるために、「見る→知る→食べる→飲む→作る→持ち帰る」の6つの体験ができるようにしました。それを順番通りに体験してもらうため、空間デザインに時間をかけました。
例えば、外からお店に向かって歩いていくと、ガラス越しに職人があんこ菓子を作っている様子が飛び込んできます。これが、1つ目の「見る」体験です。次に、お店に入るとすぐに生産地などを書いた掲示板が目に入り、2つ目の「知る」体験ができます。

「あんこ日和」の店内。
店に入るとすぐ、中央に並べられた和菓子と、奥にある掲示板が目に入る。

―次に、中村さんがプロデュースしたお店について教えてください。

中村さん:
私は「LENTO」というパンと焼き菓子のお店をプロデュースしました。LENTOはイタリア語で「ゆっくりと」という意味です。
パンは手軽に食べられるので、忙しい朝などに急いですませてしまうことが多いですよね。でも素材にこだわったおいしいパンを、会話を弾ませながらゆっくり食べる時間って幸せだと思うんです。
だから、「LENTO」ではナイフとフォークを使って、お客さんにパンを料理のように味わってもらいます。

中村さんがプロデュースしたパンと焼き菓子のお店「LENTO」
感性の高い若者をターゲットにした「LENTO」のコンセプト

―「LENTO」をプロデュースするにあたって、力を入れたことはなんですか?

中村さん:
実体験を大切にしたいと思い、時間をかけてパン屋さんやカフェをたくさん巡りました。意識して店舗を観察することで、心地よいと感じる人と人との距離感など、初めて気づくことが多かったです。

「LENTO」の店内。ナイフとフォークを使って食べる行為に最適なテーブルの寸法にするなど、お客さんにとって居心地の良い空間を目指し、インテリアデザインを行った。

―「お店屋さんごっこ」の企画を通してどんなことを学びましたか?

植松さん:
お店をプロデュースするにあたって、老舗和菓子屋などたくさんのお店を見に行き、空間デザインやインテリアについて気づいたことを記録していきました。数をこなすうちに、オーナー、デザイナー、ユーザーの3つの視点で店舗を観察するようになりました。そうすることで、今まで気にしていなかった空間の使い方にも気づくことができたり、多くの発見がありました。

中村さん:
わたしの場合は、高校生のときから「お店屋さんごっこ」の企画を知っていて、塩見研に憧れて工学院大学に入学しました。建築とマーケティング分野の両方に興味があって、ここであれば両方を結び付けて学べると思ったのです。実際に自分の企画展示をやってみて、やはり建築学部でありながら、ブランディングからサービス方法まで商業的な視点を取り入れられたのは、大きな学びになりました。

入構制限がある中での開催となりましたが、「お店屋さんごっこ」の学内展示は、学生や教職員を中心に多くの人でにぎわい、5月29日に閉幕しました。

展示スペースに置いたノートには、来場者から多くの感想が寄せられた。

「お店屋さんごっこ」特設サイト オープン

植松さん、中村さんの作品を含め、塩見研究室10名の個性的なショップは、お店屋さんさんごっこ特設サイトで公開中!ぜひご覧ください。

指導教員 塩見 一郎 教授 からメッセージ
「お店屋さんごっこ」も今回の展示で6回目を迎えました。このゼミ活動のネーミングを「お店やさんごっこ」としたのは、子供の頃になりたい自分や、やってみたい職業を想定して遊んだ「ままごと」のように、自由な発想で商空間を作り上げて欲しいという思いと、「ごっこ」という言葉の響きから、この勉強を楽しみながら商空間の「い・ろ・は」を学べるように、という思いからでした。このネーミングが良かったのか、(自画自賛?)学生たちは私の思いもよらない業種や、サービスを考え、四苦八苦しながらも楽しんで作品を完成させています。
大学では工学として建築を学び、その理論と技術を身につけていきます。一方で商環境ではオペレーションに基づいた機能を充実させながらも、そこを訪れる人の「好き」や「楽しい」という気持ちを、その場の空気感としていかに作り出せるかが大切な要素となってきます。まずは自分の「好き」や「楽しい」という気持ちと向き合い、それを形にすることから始めています。このゼミを通して商空間の構成を学ぶことは第一義ですが、提案する能力、自分の考えをもち発表する力をつけてくれることを期待しています。
今年も学生たちは期待に応えてくれたようです。

冨永研究室の学生展示「とみ展2022」開催

同じく建築デザイン学科の冨永研究室では「とみ展2022」を開催。会期中は新宿キャンパス1階で展示をしています。InstagramFacebookでも公開していますので、ぜひご覧ください!

とみ展2022 概要
第1部 住宅研究ゼミ
第2部 赤芝プロジェクト
展示期間 :2022年6月6日(月)~13日(月)
会場 :工学院大学新宿キャンパス地下1階 B-ICHI
主催 :工学院大学建築学部建築デザイン学科 冨永研究室