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0.01秒を削り出せ!学生フォーミュラで輝く未来のエンジニアたち

今年もいよいよ「学生フォーミュラ日本大会」の季節が近づいてきました。本大会は、学生による小型レーシングカーの競技会です。国内の大学や専修学校に所属する学生が各校ごとにチームを組成し、マシンの企画開発から製造、実際の走行までを担当。完成した実機の企画力や製作力、性能などを競います。同大会は、2003年に第1回が開かれて以来、コロナ禍のさなかにあった2020年の第18回大会を除いて、基本的に毎年開催されてきました。

2023年大会の様子

第22回となる今大会は、9月3日から6日にオンライン審査、9日から14日にAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催される現地審査のハイブリッド型で行われます。

昨年は、過去最高の総合4位に!

本学の学生も、『工学院レーシングチーム(KRT)』として、2005年からほぼ毎年この大会に出場しています。

特に、昨年開催された「第21回全日本学生フォーミュラ大会」では、一部の審査部門と総合順位において過去最高の順位を記録しました。直線・ターン・スラロームのコース走行性能を競う「オートクロス」部門では2位にランクイン。大会最終日に行われたファイナル6では、1位の大学と肩を並べる走行で接戦となり、最終的にオートクロス賞で2位、エデュランス(コースを約20Km走行し、走行性能、耐久性を競う部門)のベストラップ賞で2位、総合順位で4位を獲得しました。
KRTが発足から約20年にわたって蓄積してきた知見と、学生たちの熱心な研究成果により達成できたこの記録は、学内関係者や卒業生などの間で大きな反響を呼びました。

KRTチームリーダーが語る、上位入賞の秘訣とは?

当時、KRTチームリーダーを務めていた山邉港さんに、第21回大会で好成績を収められた秘訣について詳しく話を聞きました。

当時KRTチームリーダーを務めていた山邉港さん 
今年の春(2024年3月)に卒業し、現在は自動車メーカーに勤めています。

過去最高順位を獲得できた理由としては、2023年度の大会で前年度の反省点を活かしたフルモデルチェンジを行ったことです。

KRTでは数年前から、マシンの開発コンセプトとして「パワフル・キビキビ」を掲げており、「パワフル」は力強い走りをするパワートレイン、「キビキビ」はドライバーの意のままに動く軽い車両を目指しています。
しかし、2022年度に製作したマシンはボディの性能などの様々な要因が重なり、非常に重いレーシングカーとなってしまったため、コンセプトの「キビキビ」の部分、つまり細やかなハンドルさばきに対応した機敏な動きが実現できていませんでした。

そこで、2023年度は車輪やその周辺部位を中心にマシンの設計を刷新し、軽量化を実現。ハンドルさばきにかかる力を軽減できたことで、走行時のスピードや操作性が上がり、オートクロス部門で2位を獲得した華麗な走行を見せることができたのです。

山邉さんは「かなりの試行回数と解析を重ねて検討しないと実現できない設計になっており、ほかのチームには、なかなか真似できないような車体になっていると思います」と、自信に満ちた様子で語ってくれました。

学生テクニカルディレクターが分析する勝因と今後の課題

KRTでテクニカルディレクターを務めている機械工学科 3年生の大野凌さんにも話を聞きました。

KRTテクニカルディレクター 機械工学科 3年 大野凌さん

大野さんは、2023年度のマシン製作において、治具の素材を変えたことが勝因ではないかと分析しています。治具とは、何かを加工したり組み立てたりする際に、部品や工具の作業位置を指示・誘導するために用いる補助工具のことです。

KRTでは2022年度、治具に厚さ10mm程度の鉄板を使用していました。そのため、マシンの製作にかかるコストや労力、時間が想定以上に増加。自分たちの理想とするレーシングカーの実現から遠のいてしまいました。

しかし、2023年度からは、軽くてやわらかく、切削加工のしやすいアルミフレームを導入。その結果、コストや時間、労力を削減することができ、マシンの製作精度も上げることができました。

ただ、好成績を収めることができた昨年度の大会ですが、次につながる改善ポイントも実は見つかっていたといいます。それは治具をアルミ素材にしたことで生じる、溶接時の「歪み」の問題です。歪みが生じると、マシンの製作精度が落ちてしまいます。この課題の対策として、今年度は断面積の大きいアルミフレームを採用。歪みを抑え、マシンのボディなどを製作する際に生じてしまう誤差を最小限に抑えられるようにしています。

KRT史上初の総合優勝を目指して

山邉さんと大野さんは、KRTの強みについて、「メンバーが互いに尊重し合うチーム力があるところ」や「過去の成功にとらわれずに新たな挑戦を志向する文化があるところ」を挙げました。

KRTの開発コンセプト「パワフル・キビキビ」を突き詰めていくと、その途中でどうしても、パワーを最大化可能にできる部品を活かすか、機敏性を重視した設計を活かすかをトレードオフで考えなければならない場面が出てくるものです。しかし、KRTではそうしたシーンでも、各メンバーが衝突することなく、「最高のマシンをつくる」という共通目的のもとに互いの意見を尊重し合いながら、定量的な判断を下せているといいます。

そして2人は、「コンマゼロイチ秒」のタイム向上にこだわり、新しい技術を果敢に取り入れられる点もKRTならではの強みだと熱く語ってくれました。

果たして今年の大会では、KRTのマシンはどのような走りを見せてくれるのでしょうか。8月23日には、新車両のお披露目会を本学八王子キャンパスで開催します。改良を重ねた新車両で優勝を目指します!

チーム一丸となって総合優勝を目指します!

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