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真の「知らない」を検索する #Action

移動をするときも、ごはんを食べるときも、進路について考えるときも……。今や日々の生活に欠かせない行為となった「検索」。検索を通して、私たちは必要な情報を本当に手に入れることができているのでしょうか?

情報科学科インタラクティブメディア研究室では、ビッグデータを活用した情報検索・情報推薦の新たなアルゴリズムを研究。真の「知らない」情報を提供するメディアの開発に取り組んでいます。

Cast. 情報科学科 インタラクティブメディア研究室(北山大輔准教授)

「知らない」にたどり着くために

―インタラクティブメディア研究室では、どんな研究を行っているのですか?

インタラクティブメディア研究室
北山大輔准教授:
私たちの研究室では、情報検索や情報推薦のアルゴリズムについて研究しています。たとえば現在のウェブ検索エンジンでは、検索ワードを入力すると検索結果が返ってきますよね。この場合、うまく検索ワードを思いつかないと、本当に知りたい情報にたどり着かないという問題があります。
情報推薦についても同様で、ある本の1巻を買ったユーザーに2巻が推薦されるようなケースが多い。つまり、すでにユーザーがよく知っているものが推薦されるという問題があります。

北山大輔准教授

ただ、本来ユーザーが情報検索や情報推薦を利用する場合、「知らないものを手に入れたい」という欲求があるはずです。そこで、私たちの研究室では、ユーザーがおそらく知らないであろうものをうまく見つけて情報提供するような検索エンジン推薦システムを研究しています。

―「知らない」を検索するために、ビッグデータはどのように活用されているのでしょうか?

北山准教授:
ビッグデータでは、多くの人の好みや行動がわかります。その裏返しとして、あまり人が興味を持たないことやレアケースの行動もわかる。それをうまく使っている研究のひとつが「穴場検索」です。この研究では、写真を共有するコミュニティウェブサイトの情報を扱い、エリアごとに写真の総閲覧数や撮影した人数を分析。撮影した人数が少なく知名度が低いと考えられるのに、写真の総閲覧数が多いエリアを穴場として判定しています。

ビッグデータの問題としてよく言われるのが「フィルターバブル」です。これは、ユーザーが好きそうな情報ばかりがおすすめされた結果、本当に知るべき情報を知る機会がどんどん失われてしまうという現象です。ですから私たちはユーザーの好みの情報ばかりではなく、ユーザーが「知らない」と推測できる情報をビッグデータを活用することで提案できればと考えています。

+αを探す、新たな観光検索のかたち

―インタラクティブメディア研究室でビッグデータを使った観光の推薦システムを研究しているのが、高田盾作さんです。

情報学専攻 修士課程2年
高田盾作さん:
僕が今やっている研究は、観光スポットの“集合”の推薦です。たとえば旅行に行くときに「メインのスポットは決まっているけれど、他のスポットの候補が決まらない」ということがよくあると思います。そんなときにメインのスポットと相性のいいサブのスポットを推薦するようなシステムを考えています。

高田盾作さん

―どのような仕組みで、サブのスポットを推薦しているのですか?

高田さん:
私が研究しているシステムでは、スポット同士の「体験」に基づいて情報を推薦しています。たとえば草津にある草津白根山をメインのスポットとして考えている場合、同システムでは「草津温泉」、「鏡池」、「おう仙の滝」などのサブスポットが推薦されます。このときシステムの内部では、「草津白根山」は「山登る」という体験ができる場所だと判断していて、その体験と相性の良いものとして「湯 浸かる」=「草津温泉」などのサブスポット候補が推薦されるようになっています。

「知らない」検索で、人生をもっと楽しく

―現在手掛けているような新たな検索・推薦システムは、私たちの生活にはどのような変化を与えてくれるのでしょうか?

高田さん:
そうですね。たとえば旅行は複数人で行くことが多いものだと思います。現在研究しているこのシステムを少し改良してチャットグループなどに組み込むことができれば、旅行先や旅程を決める際の会話がまとまりやすくなるはず。検索を通じて人を外に連れ出していけるようなシステムになったらうれしいですね。

北山准教授:
旅行にせよ、読書にせよ、実際に体験すると楽しいものですよね「知らなかった」情報に触れることで、旅行に行きたい気分にさせたり、本を読んでみたいと思わせたり……。楽しい体験の最後のひと押しを手伝えるようなシステムとして公開できるといいな、と考えています。

工学院大学のYouTubeチャンネルでは、Action!をキーワードに、研究活動や課外活動の様子を発信しています。


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