Action! #14 6000超のデータベースで越える対話の壁
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Action! #14 6000超のデータベースで越える対話の壁

工学院大学

工学院大学の学生たちの活躍を動画で届ける特集、「Action!」。シリーズ第14弾は、工学院大学卒の大先輩が登場します。

Cast. 長嶋祐二 名誉教授(元情報学部情報デザイン学科教授)/ 渡辺桂子先生(情報学部 非常勤講師)

長嶋先生は2021年6月、約10年の歳月をかけて研究した手話DB「KoSignコサイン」を公開しました。あらかじめ選定した6000超の手話単語を3次元動作データと4K映像で記録した、質と量において世界初の高精度・高精細なデータセットです。

研究には、2015年に情報学専攻 博士号を取得し、現在は情報学部で非常勤講師をされている渡辺先生も関わられています。お二人に、研究への想いについてお話を聞きました。

情報学がハンディキャップを軽減する

―初めに、これらの手話データベースと情報学との関わりを教えてください。

長嶋先生:
これらは大別すると、福祉情報学という分野の研究となります。そもそも情報学は、コンピュータやネットワークを使って社会や人(ひと)とのコミュニケーションを円滑にする分野でもあります。情報学では社会の構成要素を①情報 ②コミュニケーション手段 ③人間 に分けて考えることがありますが、例えばスマートフォンやタブレットなどは、私たちの日常生活における「コミュニケーション手段」を情報通信技術(ICT)で高度化し、より快適に過ごせるようにしたものだと言えます。

しかし、社会構成要素の1つである「人間」は、コミュニケーションに対し完全に等質ではありません。例えば、国が違えば言語が異なりますし、視覚や聴覚などに障がいがあれば、情報を受け取ったり発信したりするコミュニケーション手段は異なってきます。
情報保障と言いますが、「場を共有する全ての人が、同時に同質・同量の情報を得て、その場に参加できるようにする」ため、異なるコミュニケーション手段を円滑につなぐのが、ICTといえます。

情報学における研究や技術開発は、コミュニケーション支援において情報格差を小さくすることが一つの目的です。福祉情報学は障がい者や高齢者の持つハンディキャップを軽減し、QOL(quality of life : 生活の質)の向上を目指すことが役目と考えています。

手話研究の新しい一歩を踏み出す

―福祉情報学分野の研究にあたるこの手話データベースでは、具体的にどのようなことができるのでしょうか。

渡辺先生:
このデータベースは、情報工学分野の画像処理、画像解析技術を用いて、手話(特にろう者が母語とする日本手話)の基本的な情報を3Dで集約したものです。
手話は、手や指の動作だけでなく、「非手指表現」という視線や表情も言語として使われています。したがって、手話を研究するには視線や表情の役割を解明する必要があるのですが、従来の図面や記録映像だけでは、腕や手の三次元的な動きを読み取ることができず、これまであまり詳しい研究が行われてきませんでした。

そこで今回、私たちは4K動画像とモーションキャプチャを使用して、全身の運動を正確・精細に記録することにしました。
全記録に対訳がついており、動作を3Dアニメーションへ変換することも可能なので、健常者が手話を学ぶための辞書や翻訳ツールとして活用することもできます。今後は、データベースを活用した研究によって手話の言語体系(表現方法や文法)を明らかにし、手話が社会全体のコミュニケーション手段として定着することを期待しています。

―ありがとうございます。ちなみに、KoSignという名前の由来は?

長嶋先生:
まず工学院大学の名前を冠することと、手話であることが分かるようにしたいと思いました。また、印象を引くために馴染みのある名称を連想させることも考えました。
その結果、KoSign = Kogakuin University Sign Language Database とし、理工系ではなじみの深い三角関数のなかの余弦関数Cosに引っ掛けて、駄洒落的に呼称をコサインとしました(笑)
研究は楽しいことが一番です。

研究は趣味であり、挑戦でもある

―お二人は、工学院大学をご卒業されていますね。今の在学生へ、勉強や研究への取り組み方や、学生時代の過ごし方について、代表して長嶋先生から、メッセージをお願いします。

長嶋先生:
研究は何にでも疑問を持ち解決への道を探る自分への挑戦です。また、時間を忘れて没頭できる趣味のようなものです。
私はコミュニケーションの不思議に魅せられメカニズムの解析を行ってきましたが、結果、様々なことが分かると同時に次の疑問が発生し、終わることがありません。
今回のデータベースも、次なる疑問の解決法を探る道具であり、情報保障のためのツール作りを目的として公開しました。これをもとに多くの研究者が育つことを願っています。ぜひ、皆さんも様々なものごとに興味と疑問を持ってください。

学生生活においては、リアルな本物に接する機会を積極的に持ってください。そこから様々な疑問を抱き、分からないことは先生へ積極的に質問してください。良い研究の種が見つかるかもしれません。将来、様々な難局にぶつかったときの解決への道を探る1つのヒントになるかもしれません。

―お二人の研究への挑戦によって、手話を母語とする人々と気軽にお話して、様々な考え方に触れる機会が増えるかもしれないのですね。長嶋先生、渡辺先生、貴重なお話をありがとうございました。

参考:【プレスリリース】工学院大学 3次元動作データ含む高精度手話データベースを提供開始

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