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中目黒が舞台 建築学部で「お店屋さんごっこ」2023

建築デザイン学科 塩見研究室では、毎年、学部4年生の学生たちが「お店屋さんごっこ インテリアデザインのお勉強」と題した展示企画を開催しています。7年目を迎える今年のコンセプトは、「自分のスキが誰かのスキに」。10名それぞれがプロデュースしたお店は、特設サイトからご覧ください!

今回のnote企画では、研究室の学生2名に企画の趣旨や作品の見どころを伺いました。

インタビューに答えてくれた 建築デザイン学科4年 長浜ひかるさん(左)、建築デザイン学科4年 小池美菜さん(右)

建築学部生による「お店屋さんごっこ」とは?

ー「お店屋さんごっこ」はどんな企画ですか?

小池さん:
学生一人一人がトータルで店舗をプロデュースし、建築模型として形にする研究課題です。
設計やインテリアデザインなど建築分野のみではなく、商品、サービス、コンセプトまで、その店に関わるすべてのことを学生が提案し、より広範な視点で意匠設計にチャレンジするのが、この企画の特徴です。お店の場所と躯体条件(建築構造を支える骨組み)のみが条件として決められています。

-お店の舞台に選ばれた場所はどこですか?

長浜さん:
今年の舞台は、目黒川沿いにカフェやショップが建ち並ぶ中目黒の人気エリアです。目黒川沿いの桜並木が満開になるころには、日本の観光客はもちろん外国人も多く訪れる場所です。

ー約10カ月かけて準備をしてきたとのこと。完成までの流れを教えてください。

小池さん:
3年生の秋に、お店を企画するところから始まりました。お店のコンセプト、ブランディングを形にしていく段階で、敷地調査や競合調査を行い、どんなお店にするかイメージを明確にしていきました。

敷地調査のようす

長浜さん:
その後、店内の動線計画を考え、店舗の設計や店内のレイアウト、インテリアデザインなどを検討していく作業にシフトしていきました。
12月には仮の模型を完成させ、研究室内で発表しました。そこでもらったアドバイスや意見を踏まえて、約4カ月かけて今回の展示までブラッシュアップを重ねました。

ハンドメイドアクセサリーのお店「toi」

ー長浜さんがプロデュースしたお店について教えてください。

長浜さん:
私はガラスでつくるハンドメイドアクセサリーのお店「toi」を企画しました。複数のガラス作家さんの商品を取り扱うセレクトショップになっていて、ショップ空間に加え、カフェや工房、さらにリサイクルできるサービスもあります。

落ち着いた雰囲気を大切にしつつ、若い世代も入りやすいようカジュアルな装いを意識しました

長浜さん:
私自身、ハンドメイドアクセサリーが好きで、好きな作家さんのポップアップに足を運んだり、自分で作ったりもしています。最近ではフリーマーケットサイトを利用して個人同士で手軽にハンドメイド品を売買できるようになった一方で、直接お客さんと販売者がやりとりをする場面が少ないと感じました。
そこで、どんな想いでアクセサリーが出来上がり、どんな想いでお客さんが手に取っているのか、作家さんとお客さんが繋がるきっかけとなれるようなお店をつくりたいと思い、このお店を立ち上げました。

店内の細部まで作り込まれた模型

ーお店のこだわり、見どころを教えてください!

長浜さん:
このお店では作家さんとお客さんが繋がる空間を目指しているため、互いの視線や声がクリアになるような空間構成にしています。

1階はショップから工房の繋がり、2階はカフェからワークショップ空間の繋がりを意識し、作家さんとお客さんが互いの様子が分かり、自然と会話が生まれるような空間にしました。

作家さんとお客さんの距離感や動線を意識した店内の配置

自家製フルーツシロップ専門店「±FRUIT」

―小池さんがプロデュースしたお店について教えてください。

小池さん:
私は自家製フルーツシロップ専門店「±FRUIT」をプロデュースしました。自家製フルーツシロップを中心に、その他にもドリンク、新鮮な果物の販売を行っています。フルーツシロップは、好きなフルーツや砂糖を選んで自分好みにカスタマイズすることもできます。

このお店の特徴は、規格外の果物を使用しているところです。規格外の果物とは、大きすぎてしまったり、傷がついてしまったりして、規格から外れ市場に卸せない果物のことを指します。日本では、生産される農作物の約3分の1がこれに該当しており、その多くが廃棄されてしまうため、「隠れフードロス」と呼ばれています。この規格外の果物の廃棄量を減らすために、このお店では、生産者から直接規格外の果物も仕入れ使用することにしました。「つくる人もたべる人も嬉しい」そんな商品をお届けするお店になればいいなと思っています。

ブラウンの木材をアクセントに、温かみあるデザインにしました

小池さん:
私はアルバイト先でのフードロス削減の取り組みがきっかけで、規格外野菜、果物の廃棄量の問題に興味を持ちました。
若者も多く訪れる中目黒で「規格外野菜、果物」の存在を少しでも知ってもらう場所になればいいなと思っています。

飲食店でアルバイトする中でフードロスに関心を持った小池さん

ーお店のこだわり、見どころを教えてください!

小池さん:
遠くから遊びにくる人はもちろん、近くに住んでいる人が、「まちの果物屋さん」という感覚でふらっと寄れるお店にしたいと思いました。3面道路に面している土地を生かし、3方向からアクセスでき通りぬけられるようにしています。
材料は落ち着いた色の木を多く使用しています。扱う果物の量や種類は季節によって異なるため、陳列の変えやすさを意識しました。

外にはテラスや庇のある空間が。店内のカフェでドリンクを買い、外でゆったり過ごすこともできます

店舗デザインは奥が深くておもしろい

ー「お店屋さんごっこ」の企画を通して、どんなことが印象的でしたか?

長浜さん:
お店の商品やサービスまで細かく企画することが初めての経験だったため、そのサービスで実際に集客は得られるのか、想像だけではわからないことが沢山あり、何度も競合調査に足を運んで考えました。

小池さん:
実際の店舗から学ぶことは、本当に多いですよね。わたしは、ゼミのみんなで銀座のまちあるきを行い、銀座シックスをはじめ、周辺の店舗デザインを見学したことが印象に残っています。先輩から素材選びや陳列方法など注目する点を教えていただき、それ以降、買い物に行くときも細かい部分まで目に留まるようになりました。

銀座まちあるきのようす

ー今まで受けてきた授業は役に立ちましたか?

小池さん:
特に3年生後期に受講した「商業インテリア」の授業で素材選びやブランディングの仕方などを学び、お店やさんごっこに直接的に役立ちました。

長浜さん:
私も同じです!どんな人をターゲットとするか、細かく架空の人物設定を行う「ペルソナ設定」について授業で学び、お店のコンセプトを形にしていく作業に活かされたと感じています。
商業施設のデザインとマーケティングが大きく関係することを、改めて学ぶ場になりました。

ー企画全体を通してどんな学びがありましたか?

小池さん
どの部分で店舗の個性を出していくのか、どんな人に伝えたいのか、一つ一つ明確にしていく作業の繰り返しの中で、オーナー、ユーザー、デザイナーの3つの視点から考えることを意識するようになりました。

長浜さん:
私は、大学入学前から商業施設のデザインに興味があり、大学選びをしていく中で、塩見研究室のことを知りました。講義で知識を身に付けるだけではなく、企画を通して実際にマーケティングの視点から建築の意匠設計やインテリアデザインを考える機会が持てたことは、大きな学びでした。

ーこれからの夢や目標を教えてください!

長浜さん:
私は、地元宮城県の震災復興で再び街が活気付いていく様子を見て、将来自分も建築の視点からまちの賑わいに貢献したいと思い、建築を学びはじめました。現在学んでいることを活かし、将来的には地域らしさを大切にした、人が集まり永く愛される空間をつくりたいと思っています。

小池さん
将来は今の商業空間の勉強を生かしディスプレイ業界で働きたいと考えています。「お店やさんごっこ」の好きを突き詰める経験は、大変でもあり楽しかったです。これからも何かを突き詰める姿勢はいつまでも持ち続けていたいなと思います。

約10カ月の間、今回の企画に向けて一緒に取り組んできた研究室の仲間たち

特設サイト公開中

約1週間の展示は、多くの学生や教職員でにぎわい、5月28日に閉幕しました。引き続き特設サイトでは、10名が制作した建築模型、お店のコンセプトまで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください!



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