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ランドスケープの視点でみる渋谷と神楽坂-TOMU LABO 2024

昨年開設されたまちづくり学科 戸村研究室では、ランドスケープを研究しています。普段触れる機会が少ないランドスケープの分野は、大学3年生から専門的な授業を行います。
今回の企画は「まちづくり学科にもデザイン分野があることを広めたい!」という学生の熱意でスタート。初めての企画展示となる「TOMU LABO」では、コンペティションに応募した3作品をパネル形式で展示します。

今回のnote企画では、戸村英子先生と戸村研究室の学生たちに、展示の見どころや企画を通しての学びを伺いました。

<戸村研究室の皆さん>
後列(左から): 長井勇樹さん、奥村卓史さん、小林大音さん、向井陸斗さん、諸天昊さん、森伊吹さん
前列(左から): 小泉葵生さん、小中冨莉子さん、戸村英子先生、宮腰咲良さん、川田桐奈さん

「TOMU LABO」とは?

-「TOMU LABO」はどんな企画ですか?

小中冨さん:
「TOMU LABO」は「SHIBUYA PRAK AVE.2040 DESIGN COMPETITION」に応募した2作品と、「新宿みらいアイデアコンペティション」に応募し優秀賞を受賞した1作品の計3作品を、ブラッシュアップとアレンジを加えてパネル形式で展示しました。
企画を通して、戸村研究室でどのような活動をしているか、何を学べるのかを学内外の多くの方々に理解していただくことを目的としています。

-戸村研究室ではランドスケープを研究されているそうですが、どのような分野でしょうか?

戸村先生:
「建築」が建物の設計や人のための室内空間を作るのに対して、ランドスケープはその土地における資源、環境、歴史などを組み合わせた外部空間をデザインする分野です。単に自然を大切にするだけではなく、人が使う空間として自然とどのように共存できるか、また人と環境のバランスが取れた空間をどのように作るかを考えます。

-街をどのような視点で見ると、デザインに発展する気づきを得ることができるのでしょうか?

戸村先生:
その街らしさ、歴史、地形などを考慮しつつ、どのようにすればここを利用する人々にとって楽しい空間になるか、環境が良くなるか、過去と未来をつなぐ素敵な空間になるかを考えることが大切です。
私は授業で「ここが良い空間だと思ったら、実際に測って分析しなさい」とよく言います。例えば、木漏れ日が心地よい空間だと思ったら、どんな樹木でどのような木漏れ日ができているのかなど、常に「なぜだろう?」と疑問に思うことが大切だと学生たちに伝えています。

普段、何気なく過ごしている空間にも、様々なアイデアや想いが詰め込まれているのですね。ここからは、研究室で取り組んだ3作品を紹介します。

「アングラ~あなから広がる文化~」

代表:宮腰 咲良

-作品について教えてください。

宮腰さん:
私たちのテーマは「公園通りを新たなサブカルの発信地とすること」です。公園通りとその周辺の一部道路の地中化、公園通りから代々木公園までの長い坂にLRT(軌道系交通システム)を設け、さらに地上と地下をつなぐ穴を配置するなど、渋谷の整然と雑多が混在する異質さをデザインに取り入れました。上下左右に回遊性のあるウォーカブルな空間が多様な活動を創出し、空間をつなぐ穴が境界を曖昧にすることで、それらが発信・拡散されていく公園通りを計画しました。

-この作品を作ろうと思ったのはなぜですか?

宮腰さん:
かつての渋谷では、安価で人目につきにくい地下空間で下位文化を発展させてきました。しかし、建物の高層化や再開発に伴い、現在では、大衆に認知されたカルチャーは大きくテナントとして、そしてサブカルは建物内を中心にひっそりと展開されています。そこで私たちは新たなサブカルの発信地として再度アングラに着目しました。

-こだわりポイントを教えてください。

宮腰さん:
公園通り一帯に単調に穴を設けるのではなく、穴に沿う動きや穴から離れる動きを吸収・発散と捉え、その原理と各エリアの特性を適合させ、人の流れを誘導するようにデザインしました。

「渋谷の森」

代表者:小林 大音

-作品について教えてください。

小林さん:
私たちのテーマは「自然とともに成長する渋谷の森」を計画することです。渋谷は小さな無数の活動の集まりが渋谷のカルチャーを作り出しています。一方、明治神宮も多様な生物の食物連鎖が起こり極相林の森を作り出しています。私たちは、渋谷のカルチャーと明治神宮の森という比較不可能な2つの価値が共存するエリアを計画しました。

-この作品を作ろうと思ったのはなぜですか?

小林さん:
渋谷のカルチャーの成長が、自然の成長と似ていると思ったことがきっかけです。
森はマツなどの針葉樹林から成長し、徐々にマツの木陰から新たな生命が誕生して、最終的にはクスノキなどの常緑広葉樹が森を作っていきます。この生態系の変遷が、渋谷のカルチャーの移り変わりに似ていると考えました。

-こだわりポイントを教えてください。

小林さん:
渋谷の森を作るために、一つ一つの植物がわかるように植栽にこだわり、パース(建物を立体的に表現する図法)を描きました。このパースは、明治神宮の森とのつながりを意識してデザインしています。

「さかのぼる」

代表者: 向井 陸斗

-作品について教えてください。

向井さん:
神楽坂の歴史を振り返り、「粋なお江戸の坂の街」を蘇らせるために設計しました。そのヒントとして、私たちは飯田橋駅近くにある江戸城跡の石垣に注目しました。その石垣の技法をアレンジして石畳に取り入れることで、神楽坂から交差点までの歩行空間をシームレスで過ごしやすい空間へと変化させました。デザインを落とし込むだけでなく、環境面への配慮や歩行者空間とオープンスペースの快適性も考慮しながら設計しました。

-この作品を作ろうと思ったのはなぜですか?

向井さん:
神楽坂は、今もなお街を歩けば路地裏にお江戸の風情を感じることができるお店や雰囲気があり、夜は活気あふれるグルメの街となっています。しかし、飯田橋駅と神楽坂を大きな交差点が分断しており、その活気が神楽坂の外へ発信されていません。今の神楽坂の良さを残しつつ、お江戸と現代の技術の融合によって、その魅力を自然に引き出そうと考えました。

-こだわりポイントを教えてください。

向井さん:
この土地特有の歴史と紐づけながらオリジナルの石畳を提案したこと、そして環境面へ配慮したアイディアを取り入れたことがこだわりのポイントです。
石畳の隙間から雨水をゆっくり浸透させ、歩行空間にあるベンチの中に貯水することで、持続可能な緑化空間を提案しました。

戸村研一期生、一丸で取り組んだ展示企画

-「TOMU LABO」の企画を通して、どんなことが印象的でしたか?

小中冨さん:
私たちは戸村研究室の一期生ということもあり、一つ一つの活動について何を行うか考えながらゼミを進めてきました。組織で一つのものを完成させるグループ作業では、メンバーそれぞれが強い考えやアイデアを持っているため、時には意見がぶつかることもありました。しかしその過程で、相手の意見を尊重しながら、自分の意見も積極的に発信することの大切さを実感しました。全員のモチベーションが高かったからこそ、化学反応を起こし、良い作品につなげることができたと思います。

-今回の企画に役立った授業はありますか?

小中冨さん:
これまで受けたすべての授業が今回の展示に繋がっていると思います。
設計を進める中で、その土地の歴史、住民、自然環境など多くのことと繋がっていることを発見し、今までの授業で学んだことをノートや授業資料を参照しながら設計を行いました。その中でも特に役立ったと感じる授業は、設計の授業と戸村先生のランドスケープの授業です。全体のプロセスを学ぶことで、いつまでに何を終わらせなければならないかを計画しながらコンペティションに取り組むことができました。また、ランドスケープの授業で学んだことを活かして、ランドスケープ的な視点やアイデアを作品に反映させることができました。

個性溢れるランドスケープの世界

-戸村先生、全体の総評をお願いします!

戸村先生:
今回展示した3作品は、学生たちに「ランドスケープとは何か」を少しずつ教えながら作り上げたものになります。作成中は、あえて内容についての意見は言わないように心がけ、自由な発想で設計してもらいました。学生が自主的にどのようなデザインが良いかを考え、それぞれの「らしさ」を出せたランドスケープを設計できて良かったと思います。

-これから建築を学ぶ高校生へメッセージをお願いします!

戸村先生:
建築学部には幅広い分野があり、「まちづくり学科」でもデザインを学ぶことができます。
興味を持ったことを発見し、楽しんで取り組んでいただければと思います。

▼戸村研究室の様子はInstagramでも紹介しています!ぜひご覧ください!


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